2012-08-01から1ヶ月間の記事一覧

434話 シェムリアップにて  ―活字中毒患者のアジア旅行

私は不幸の星のもとに生まれてきたらしい。 書いていた本の発行が遅れたために、タイに来たのが暑い盛りになってしまった。今年はエルニーニョの影響とかで、ずっと暑い日が続いているらしい。雪が降っているころに日本にいて、タイに来たら、汗でパンツが濡…

433話 アジアの練習問題  ―活字中毒患者のアジア旅行

次の文章を読んで、誤りがあれば訂正せよ。 ①東南アジアの別称は、インドシナである。 ②東南アジアの人たちがトイレで紙を使わないのは、インド文化の影響である。 ③東南アジアの4月5月は、乾季にあたる。 ④ビルマのワイロ政治は、アジア特有のずさんさのせ…

432話 生活を覗く  ―活字中毒患者のアジア旅行

韓国で初めて泊った宿は、伝統的な民家をそのまま利用した民宿だった。田舎で訪れた家のなかに、白いペンキで塗装したアーリーアメリカン調の医院があった。取材では、マンションにも行ったことがある。 そんなことを思い出しながら読んだのが、『韓国現代住…

431話 大衆文化とバンコクのパッポンの話  ―活字中毒患者のアジア旅行

いつもの冬眠旅行を終えて帰国したところなので、日本ではまだ本の買い出しには行っていない。タイで買った本のうち何冊かを同時に読み始めたままで帰国することになったのだが、日本語の本がいくらでも手に入る日本では、このまま英語の本をコツコツ読んで…

430話 なぜか、今回は女が書いた本特集  ―活字中毒患者のアジア旅行

日本に帰ってくるとヒマだから、晴読雨読活字三昧の日々。最近読んだ本を、片っぱしから紹介してみよう。今回は、なぜか女が書いた本が多くなった。 まずは、パキスタンの小説。『ダーダーと呼ばれた女』(ハディージャ・マストゥール著、鈴木斌編訳、大同生…

429話 フィリピンの小説、まとめ読み  ―活字中毒患者のアジア旅行

『ライ麦畑でつかまえて』のホールデン少年が、大学生になってマニラにやって来た。『民衆』上下(フランシスコ・ショニール・ホセ著、山本まつよ訳、めこん)の、最初のページを読んでそんな印象を受けた。しかし、フィリピンのこの少年ペペは、アメリカの…

428話 世界三大スープの謎を追い、食文化研究を考える  ―活字中毒患者のアジア旅行

おそらくもう何百回も使われたキャッチフレーズ、「世界三大スープのひとつ、トムヤムクン」。タイ料理やタイ料理店を紹介する雑誌記事にこのフレーズが登場したら、「私、タイのこと知りません。苦し紛れに、常套句を使っています」と告白しているようなも…

427話 アジア本の欠陥  ―活字中毒患者のアジア旅行 

今年のベスト1はすでに決まっている。「第三世界の外食産業」を特集した「アジ研ニュース」(1991年1.2月合併号)だ。いずれ「アジアを見る眼」シリーズの1冊として、単行本として発売されるだろう。 今年のベスト2か、あるいはこちらをベスト1にしてもいい…

426話 バンコク1991年2月  ―活字中毒患者のアジア旅行

「おい、どうしたわけだ!」と嘆きたくなる。いつもなら、バンコクに来て第1回本屋巡りをやれば、すぐさま段ボール箱1個分くらい読みたい本が見つかって、そのなかから、とりあえず、今買っておかないといけない本を厳選して買い集めているうちに、結局は…

425話 人生はおもしろい  ―活字中毒患者のアジア旅行

ケニアの北、エチオピアとの国境上にあるトゥルカナ湖のほとりに建つ掘立小屋の飯屋で、テラピアのフライを食べていた。淡水魚だが、海水魚のような味でなかなかうまい。店の柱にくくりつけたトランジスターラジオから、雑音まじりでなつかしい歌声が聞こえ…

424話 無知も、ときには味方する   ―活字中毒患者のアジア旅行

私はなまけ者で、根気がない。だから、学問に関しても、基礎からコツコツと地道に勉強していくのはどうも苦手だ。中学卒業以後、まともに勉強などしたことがない。それが、数多くある私の欠点のひとつだと思うのだが、無知と無教養がときには味方することも…

423話 お嬢さん留学・遊学記   ―活字中毒患者のアジア旅行  

『オラワン家の居候』(鶴田育子、文藝春秋)を読んで、腹が立った。よくも、まあ、こんな内容のない本が世に出たものだ。元来、女性が書いた本はあまり読みたくならない私だが、皮肉にもこの本がきっかけとなって、女性が書いた留学・遊学記をまとめて読む…