2015-09-01から1ヶ月間の記事一覧

747話 大学講師のレポート その4

思い出に残るレポート 特上の評価であるSは、毎年一人か二人程度だろう。たまには、「受賞者なし」という不作の年もあるが、レポートを提出した約200人のなかで、ひとりか、多くてふたりという優秀な成績だ。今までS評価をしたなかで、3本のレポートは今でも…

746話 大学講師のレポート その3

レポートの日本語 成績の評価はレポートにした。出席はとらないから、100%レポートの評価で成績を決める。 そのレポートをどういう内容にするかというのは、けっこう難しいのもので、かなり頭をひねった。学生の知識だけを問う出題にはしたくなかった。…

745話 大学講師のレポート  その2

出席はとらないが 下 出席を厳しくとるようになった大学では、授業風景はどうなったのか。友人知人たちの話によれば、「飲食は当たり前」という。女子大では「化粧は当たり前」だという。それくらいで注意していたら、授業が進まないから、実害がある「おし…

744話 大学講師のレポート  その1

出席はとらないが 上 ひょんなことから大学の講師になって、もう10年以上たつ。立教大学観光学部兼任講師というパートタイム勤務である。科目名は一応「トラベルジャーナリズム論」ということになってはいるが、それがどういう学問かという定義などない。自…

743話 白菜キムチはまだ新参者

韓国のKBS(日本のNHKのような公共放送)で、もう200回以上放送している「韓国人の食卓」は、韓国のおもに農村山村漁村離島を訪ねて、その地域の食生活を見る1時間ほどの番組だ。良くも悪くも、学問的というよりは心情的な番組作りだから、ある食材に…

742話 机に積んだままの本の話をちょっと その8

芸能のことから 私の関心分野のひとつに芸能や音楽がある。芸能を通して見る社会や歴史がおもしろいからだ。最近読んだのは、『蝶々にエノケン』(中山千夏、講談社、2011)だ。この本は読まなくても上出来だとわかるのは、索引がついているからだ。学術書で…

741話 机に積んだままの本の話をちょっと その7

砂糖 雑誌や新聞の書評欄の執筆は、自分にはできないと思う。無理すれば、短期間ならなんとかなるかもしれないが、やりたい仕事ではない。基本的に新刊の紹介や書評をやるのだが、私が本を選ぶ基準は新刊であるかどうかではなく、その時に読みたい本というこ…

740話 机に積んだままの本の話をちょっと その6

物の運び方と抹茶の話 『<運ぶヒト>の人類学』(川田順造、岩波新書、2014)は、全集5冊分のダイジェストのような本で、映画の予告編のようだとも言える。ヒトの姿勢と、ものを運ぶ道具と運び方を書こうとしているのだが、論を展開するために、かねてから…

739話 机に積んだままの本の話をちょっと その5

漂って生きる 小学生に「将来、なりたい職業は?」といった質問をすると、男なら、「サッカー選手、野球選手、社長、宇宙飛行士」など、今も昔もあまり変わらないようだが、私はそういう夢や希望はなかった。なりたい職業はないが、やりたくないことはあった…

738話 机に積んだままの本の話をちょっと その4

ツアー研究の欠けた部分 観光学の研究書として、ツアーを取り上げたものが何冊かあり、行きがかり上、その、何冊かを読んだのだが、どうもパッとしない。統計の数字と外国の学者の論文引用が続き、知る歓びがないのだ。先日買った専門書、『パッケージ観光論…

737話 机に積んだままの本の話をちょっと その3

グラフィックデザインが図案といわれていた時代 山藤章二(1937年生まれ)という人物への興味と、グラフィックデザインの戦後史などへの興味もあって、『自分史ときどき昭和史』(山藤章二、岩波書店、2014)を読んだ。山藤章二の本はほとんど読んでいるが、…