2020-01-01から1年間の記事一覧

1524話 特別編 年末年始

今回で、2020年の最後になる。調べてみると、今年は160話くらい書いたようで、400字詰め原稿用紙にして1000枚ほど書いたことになるらしい。新書4冊分くらいになる原稿量だから、いかにヒマだったかよくわかる。 連載している「本の話」はまだまだ続くのだが…

1523話 本の話 第8回

『思索紀行 ぼくはこんな旅をしてきた』 『思索紀行 ぼくはこんな旅をしてきた』(書籍情報社、2004)が、2020年にちくま文庫に入った。文庫版は「大幅加筆訂正」はないだろうと推察して、内容の点検はしていない。だから、ここでは書籍情報社版で話を進める…

1522話 本の話 第7回

『知の旅は終わらない』(立花隆、文春新書) その 4 立花の著作の中に『思索紀行』(書籍情報社、2004)がある。すでに紹介した1960年のヨーロッパ旅行から、この本がでるちょっと前までの旅の話を集めた本だ。 この本を資料に文章を書きたいとは思ったも…

1521話 本の話 第6回

『知の旅は終わらない』(立花隆、文春新書) その 3 東大でフランス文学を専攻することとなった立花は、フランス文学に限らず、主に20世紀文学を徹底的に読み漁った。 「文学を経ないで精神形成をした人は、どうしても物事の見方が浅い。物事の理解が図式…

1520話 本の話 第5回

『知の旅は終わらない』(立花隆、文春新書) その 2 大学生立花隆のヨーロッパ旅行の話の続きだ。 宿と食事と移動は現地の好意にすがるというこの方法で、現地滞在費はなんとかなる見通しはついた。高額の旅費は、阿部知二(作家)、朱牟田夏雄(東大教授…

1519話 本の話 第4回

『知の旅は終わらない』(立花隆、文春新書) その 1 語り下ろしのこの新書は、筆者の知の獲得史だが、ここにも1960年代の海外旅行の話が出てくるので、まずはそこから始めよう。 1959年に東京大学に入学した立花隆は、「当時の若者たちが誰でもそうだった…

1518話 本の話 第3回

『客室乗務員の誕生』(山口誠 岩波新書) その 3 山口の文章を引用する。 「1965年4月に第1便をヨーロッパに送り出したジャルパックは、1960年代後半を通じて海外旅行商品のトップブランドとして成長し、やがて日本の海外旅行の代名詞にもなった」 「1960…

1517話 本の話 第2回

『客室乗務員の誕生』(山口誠 岩波新書) その 2 1954年、日本航空は戦後初の国際定期便を飛ばす。前回話したサンフランシスコ線だ。日本航空にとっては晴れの飛行だが、残念ながら航空券はほとんど売れなかった。その理由を山口はこう書く。 「そうした不…

1516話 本の話 第1回

『客室乗務員の誕生』(山口誠 岩波新書) その1 客室乗務員に関して本腰を入れて調べてみようとしたことはないが、旅行史の研究として、少しは資料を読んだことはある。日本航空や全日空や日本交通公社の社史のほか、本棚の交通関連書からスチュワーデスが…

1515話 電話番号は?

渡辺謙主演のテレビ朝日のドラマ「逃亡者」は、あまりドラマを見ない私が言うのは変かもしれないが、前代未聞、空前絶後の駄作愚作だった。世間の多数派には入らないことが多い私だが、ネット情報を見る限り、このドラマに関しては、私と同じ感想だった人が…

1514話 思い出話と歴史 その5

旧知の大学教授たちとパソコンの話をしていたら、こんな話を始めた。 「最近の学生は、スマホでなんでも済ませるので、パソコンが使えない学生が多くなってね。だから、授業でレポートの話をするときは、スマホとプリンターの接続方法とそのコードといった講…

1513話 思い出話と歴史 その4

私に社交性はないし、宴会などにはほとんど縁がないのだが、それでも私の知らない世界を生きてきた人たちとたまたま雑談するような機会はある。年齢が違い、業種が違っても、私には「知りたがり」という好奇心はあるので、いろいろな話を聞くのが楽しい。 50…

1512話 思い出話と歴史 その3

終戦後、日本は連合国の支配下にあったが、1951年、日本はアメリカと「サンフランシスコ平和条約」( Treaty of Peace with Japan)を結び(発効52年)、晴れて独立国となり、国際社会に復帰した。IMF(国際通貨機構)に加盟したのも1951年だが、その当時の…

1511話 思い出話と歴史 その2

過去を知ることは重要だ。過去を調べる行為に、老いも若さもない。 経済に興味がない。経済書など読んだことがない。それなのに、戦後日本経済史関連書を読んでいたことがある。戦後日本人の海外旅行史を調べていた時だ。 日本で海外旅行が自由化されたのは1…

1510話 思い出話と歴史 その1

若者から「若い」と思われたい中高年は、思い出話をしないらしい。若者が思い出話を苦手なのは当然で、語るような過去が自分にはほとんどないからだ。中高年はそういう若者に迎合して、過去を語らない。親が若かった頃のことをよく知っている子供はそれほど…

1509話 あれから8か月 その11(最終回)

帰りの車内で、『東南アジアのスポーツ・ナショナリズム SEAP GAMES/SEA GAMES 1959-2019』(早瀬晋三、めこん)を読み、帰宅してもそのまま読み続けた。予想していた以上に、おもしろい。 2年ごとに開催される東南アジアのスポーツ大会が始まったのは1959…

1508話 あれから8か月 その10

かつて、新大久保は、アジア料理を食べ、タイや中国の食材を買い出しに行く街だった。アジアマニアが通う秘密の地区という感じだったのだが、いつの間にか韓国食品街になり、韓国化粧品店街や韓国アイドルショップの街になり、女子高生がワイワイガヤガヤや…

1507話 あれから8か月 その9

大回りになるが、買い出しをしてから帰宅することにした。千代田線で新御茶ノ水から西日暮里、山手線に乗り換えて新大久保。今年初めての新大久保だ。ホームから階段を下りて改札口に向かうと、改装して明るくなっているのに気がつく。この改札口は、ひと昔…

1506話 あれから8か月 その8

いつもなら、三省堂に行けば、1階奥の海外旅行書コーナーをチェックして、階上で文庫や新書の新刊書をチェックすることから三省堂散歩が始まるのだが、今回はトイレに寄っただけで、すぐ出てしまった。当分は、旅行には行けないとわかると、本の買い方が変わ…

1505話 あれから8か月 その7

きょうの神保町散歩は買い出しではなく、事情調査という色合いが強く、いつも行く店以外は、店頭のワゴンセールを見るだけで、店内に入らない。人通りは、広い靖国通りは例年の2割減というくらいだが、1本脇に入ると日曜日であるかのように閑散としている。…

1504話 あれから8か月 その6

貧乏なのに、なるべく図書館で本を借りないようにしているのは、コメントや疑問点を本に書き込めないからであり、重要な本はまた必要になることがあるからだ。人名など事実確認のために、わざわざ図書館に出かけたくない。それほど高くない本なら、手元に置…

1503話 あれから8か月 その5

矛盾している行動だとはわかっている。中古CDショップに入ったのに、なるべく買わないようにブレーキをかけている。わざわざ神保町の古本屋街に来たというのに、なるべく本を買わないようにブレーキをかけている。買ったCDはすべて聴いているが、まだ読ん…

1502話 あれから8か月 その4

めこんのオフィスを出て、御茶ノ水駅に至る坂を下りて、東京医科歯科大学病院前を歩き、中央線にかかるお茶の水橋を越えて、神保町に向かう。左手に見えるお茶の水駅はここ何年もずっと工事中だ。明大通りを歩けば、ディスク・ユニオンのジャズ専門店「Jazz …

1501話 あれから8か月 その3

編集者に会うと出版企画を口にしたくなるというクセがあって、私の企画を聞いた天下のクラマエ師(旅行人)の場合は、「そんな本を読みたがるのは、前川さんだけだよ」となり、めこんの場合は、「そんな本、読みたいと思うのは僕と前川さんだけだよ」となる…

1500話 あれから8か月 その2

仕事の邪魔をしては申し訳ないとは思いつつも、桑原さんと1時間以上雑談をした。状況を正確に言えば、「雑談につきあってもらった」が正しい日本語だ。 現在のタイの政治状況に関しては、ふたりともほとんど同じ感想だった。 ・この先どうなるのか、まった…

1499話 あれから8か月 その1

今年3月以来、初めて上京した。この8か月間に、電車に乗ったのは3分乗車の往復が1回、10分乗車の往復が1回、外食が1回、ブックオフに数回、それだけだ。食料などの買い出しにスーパーマーケットにはほぼ毎日行っていて、空が晴れ渡り気持ちがいい日なら…

1498話 『失われた旅を求めて』読書ノート 第16回(最終回)

イベリア半島 2002年にイベリア半島を旅した。スペインは1975年以来27年ぶりだった。東ヨーロッパの開放や韓国や中国の経済力向上に伴い、それらの国々の人々に海外旅行をする余裕ができたことで、スペインにやってくる観光客も急増していた。私が初めて行っ…

1497話 『失われた旅を求めて』読書ノート 第15回

カオサン その4 日本人旅行者がチャイナタウンの楽宮旅社に集まり、階下の食堂、北京飯店が日本料理を出すようになり、日本語だけのメニューを掲げた。楽宮が満室になることが多くなると、日本人旅行者はすぐ近くのより快適なジュライホテルに移動して、日…

1496話 『失われた旅を求めて』読書ノート 第14回

カオサン その3 カオサンに関する論文を書いている研究者は何人もいるが、どれも感心しない。その理由はタイやカオサンの歴史を詳しく調べていないからであり、カオサンについてわずかに書いてある情報は、『カオサン探検 バックパッカーズ・タウン』(新井…

1495話 『失われた旅を求めて』読書ノート 第13回

カオサン その2 『地球の歩き方 タイ ‘89』(1989)は、なぜか、それまでの、そしてそれ以後の『’90~‘91』のように2年単位になっていない。その理由は不明だが、ここではそのガイドに載っているバンコクの安宿情報の話をする。 「バンコクのホテル」は12ペ…