2022-04-01から1ヶ月間の記事一覧

1733話 尿意を催す その3

どのエッセイだったか忘れたが(多分、『考えごとしたい旅 フィンランドとシナモンロール』)、益田氏が外国の公園を散歩していて、「急に尿意を催して、ショッピングセンターに急いだ」というような文章があり、日常の、そういうことを書く人はいなかったな…

1732話 尿意を催す その2

日本人の旅行史を書くために、多くの旅行業関係者に話を聞いた。添乗経験30年以上という人が、こういう話をした。 添乗員にとっていちばん重要なことは、お客様の安全。次は予定通りの行程。「3番目はトイレでしょうね。的確なタイミングで、日本人の使用に…

1731話 尿意を催す その1

『食卓の上の韓国史』を読んでいるときの休憩に、アマゾン遊びをした。韓国関連の本を探すと、俳人が釜山からソウルまで歩きながら句作した旅行記が見つかり、その本を注文した。『サランヘヨ』(黛まどか、実業之日本社、2003)は、2001年8月から2002年10…

1730話 文化の研究

前回、『食卓の上の韓国史』で、研究の基本姿勢「食の歴史研究法」14項目のなかから6項目を紹介した。その部分を読みながら思い出したのは、私がタイ音楽の勉強をしていた1990年代の日々だ。 そのころ毎年タイで半年ほど過ごしていた。音楽はまだCDの時代で…

1729話 食文化本の豊穣 下

食文化から韓国史を語る『食卓の上の韓国史 おいしいメニューでたどる20世紀食文化史』(周永河、丁田隆訳、慶応義塾大学出版会)が出たのも、2021の12月だった。著者周永河(チェ・ヨンハ)は、韓国の食の人類学や民俗学を専攻する大学教授。食文化関連の著…

1728話 食文化本の豊穣 上

『中国料理の世界史』が出た2021年に、比較的高額の食文化本が多く出た。特になにかのきっかけはないだろうが、出版界ではいわゆる「お料理本」が多いなか、食文化を視野に入れた本が多く出た。 その最高峰に『味の台湾』(焦桐、川浩二訳、みすず書房、2021…

1727話 無理を重ねた『中国料理の世界史』 その10(最終回)

そのほかにも、もうちょっと 282ページに、こういう文章がある。 「クェイティアオ・ラッドナ(kuay tiew rad naa)」は、炒めたクェイティアに肉や野菜を入れ、少し粘りけがあって甘く塩辛いスープを用いる。これは、日本の「広東麺」に近く、タイでもっと…

1726話 無理を重ねた『中国料理の世界史』 その9

小舟の麺料理 282ページに「クェイティアオ・ルア」という麺料理の話が出てきて、「それは『ボート・ヌードル(boat noodle)』とも呼ばれるように・・・」と、突然英語が出てくる。タイ人が英語でそう呼ぶわけはないので、あとの説明の出典を調べたらウィキ…

1725話 無理を重ねた『中国料理の世界史』 その8

「パッタイ誕生のいきさつ」を疑う 下 前回、数多くの問題点を書き出した。著者の岩間氏は、私が感じた数々の疑問に違和感はまったく抱かなかったのだろうか。「ほんとかい?」と疑問に思って調べ直さなかったのだろうか。 280ぺージに、岩間氏はこう書いて…

1724話 無理を重ねた『中国料理の世界史』 その7

「パッタイ誕生のいきさつ」を疑う 上 前回紹介した「パッタイ誕生のいきさつ」を点検する。 まずは、2の、コメ不足の対策としてクズ米を麺状に加工して食べることをタイ政府が奨励したという話は、とても信じがたい。コメが不足しているから、クズ米をわざ…

1723話 無理を重ねた『中国料理の世界史』 その6

タイの調理法とパッタイの料理 中国から鉄鍋が伝わる以前のタイでは、「土鍋で調理したので、調理方法は浸す、和える、煮るなどであり」(278ページ)としている。もう少し詳しく説明すると、もっとも普通の料理は山野草を生かゆでて、タレに付けて食べる…

1722話 無理を重ねた『中国料理の世界史』 その5

カノムチーン 『中国料理の世界史』の277ページに、こういう文章がある。 第2次世界大戦後のバンコクの飲食店は、高級中国料理店とホテルの西洋料理店以外では、「小さな店でクェイティアオやカノムジーンやタイカレーを売っていた」という。「クェイティア…

1721話 無理を重ねた『中国料理の世界史』 その4

宮廷料理 「タイの宮廷料理」なるものの話の続きだ。 タイには自称「宮廷料理店」なるものがあり、BANGKOK naviの紹介記事を読むと、なんと「宮廷料理とタイの一般料理は基本的には同じメニューであるようです」とはっきり書いている。誰が書いた文章かわか…

1720話 無理を重ねた『中国料理の世界史』 その3

資料を疑え 『中国料理の世界史』は索引などを含めれば600ページほどの本で、そのなかの「第3章 タイ ―パッタイの国民食化・海外展開に至る道」はわずか22ページしかない。しかも、記述の多くは、タイ政治史の資料を読んだ読書ノートなのだ。タイの食文化に…