2023-01-01から1年間の記事一覧

2016話 料理の油 その9(最終回)

油の原料 さまざまな油の製造に関して、ヨーロッパや中国や日本の歴史は少しは知っていて、もっと知りたければ資料も数多くある。しかし、東南アジアの油に関してはさっぱりわからない。 最初の油は食用ではなく明り用だろうと思うのだが、東南アジアでナタ…

2015話 料理の油 その8

韓国料理 朝鮮人と油の関係は、日本人の場合とあまり変わらなかったと思う。朝鮮では昔から肉をよく食べていたという人がいるが、誰もが日常的に食べていたわけではなく、山谷にクマやイノシシやシカなどの野生生物が数多く棲んでいたというわけでもないだろ…

2013話 料理の油 その7

精進料理 中国系タイ人の間で、年に1回、精進料理を作り、売り、食べる期間が秋にある。これをタイ語でキンチェーという。キンは「食べる」、チェーは中国語の「齋」で、精進料理を食べる期間をさす。この期間に中国人街やショッピングセンターの食品売り場…

2012話 料理の油 その6 

ビルマ料理 ラングーンで初めてその料理を食べて、「ああ、インドが近くなったな」と思った。その料理がウェッターヒンというのだということは後から知ったのだが、タイからビルマに入った旅行者には、インド亜大陸が近くなったと実感する料理だった。 深皿…

2011話 料理の油 その5

鶏油(チーユ) 銀座の中国料理店で、ニワトリの脂身から油を取り出すのがコックの見習いをしている私の仕事だった。ニワトリの皮や脂を鍋に入れて、弱火でコトコト加熱すれば出来上がりだろうと甘く考えていたのだが、ちょっとしたテクニックが必要だった。…

2010話 料理の油 その4 

中国料理 池袋で友人と会った。「まずは、飯を食うか」ということになり、友人が「ちょっとおもしろい店だよ」という店に案内された。その友人も、ちょっと前に知人に教えてもらったという。 池袋の、とくに北口方面はチャイナタウンと呼ばれている。横浜の…

2009話 料理の油 その3 

フランス料理 20年ほど前のことだ。高校時代の同級生がパリで旅行社に勤めているということで、彼のアレンジでフランスとスペインの旅行をしようと級友たちが団体旅行を企画した。私にも案内が来たが、もちろん断った。団体旅行をする気はない。ただし、この…

2008話 料理の油 その2 

オリーブオイル 2013年のアジア雑語林でこういうことを書いた。576話台湾・餃の国紀行(2013年12月27日掲載)の文章をそのまま再録する。私が書いた文章だから、著作権を考えなくていいのが楽だ。それはともかく、10年前の雑語林だと、まだ576話なんですね。…

2007話 料理の油 その1 (全9回)

マーガリン これから8回の予定で、料理の油の話をしてみようと思う。そのきっかけは、ユーチューブの料理動画だ。 料理動画をよく見ている。それは、「おいしい天ぷらの揚げ方とか、「簡単 イタリア料理」といった実用情報ではなく、外国の食堂や屋台の料理…

2006話 キンキの話

何の事前情報もなく見た韓国映画「オマージュ」が、よかった。佳作だ。高額ギャラのスターは出ていないが、顔つきがいい俳優が多い。カネも大してかかっていない。爆薬もカーチェイスも殺人もCGもない。タイムスリップも男女入れ替わりも財閥もない。それが…

2005話 サラリーマンとして大過なく

前々回に、目立つことを嫌う大学生は、大過なく過ごしたいサラリーマンに似ているというようなことを書いた。考えてみれば、大学生のほとんどは卒業してサラリーマン(もちろん、公務員もサラリーマンだ)になるのだから、志向がサラリーマン的であるのは当…

2004話 目立たないことと自己顕示欲 後編

若者は目立ちたくないのか。いや、違うなと感じたきっかけはSNSだ。 匿名の書き込みは、うさ晴らしにはなっても、自己顕示欲は満たせない。「オレだよ、オレ!」と、オレの存在を示したくても、オレは匿名だ。本名をさらして意見を言う度胸はない。氏素性を…

2003話 目立たないことと自己顕示欲 前編

大学で授業をするようになって気がついたことは、「のれんに腕押し」だった。授業中に質問や意見がない。学生はノートを広げ、何か書いている。「何か」と無責任なことをいうようだが、私はあまり板書はしないので、学生は私の話を聞いて要点をノートに書い…

2002話 たんなる通過点に過ぎないが その3

このブログでいくつかのテーマで記事を書いてきた。この機会なので、それぞれのテーマに関する全体像や問題点や希望などを書いておこうと思う。 ■旅行史・・・軍隊や探検隊などの団体の移動ではなく、目的地が定まった巡礼でもなく、気ままな自由旅行者が増…

2001話 たんなる通過点に過ぎないが その2

新しもの好きのあるライターは、ブログというものが話題になったとき、すぐさま手をつけたが、数回更新しただけで止まった。「どうしたの?」と聞いたら、「カネにならない原稿を書いてもしょうがないから」と言った。 私は「カネなんかいらない」と思ってい…

2000話 たんなる通過点に過ぎないが その1

今回で、連載2000回になった。ある記録に到達したスポーツ選手がよく口にするように、「数字はたんなる通過点に過ぎないので・・・」という感じはよくわかる。2000回書くことを目標にしていたわけではなく、書いているうちにいつの間にか2000回になっただけ…

1999話 最近読んだ本の話から その10(最終回)

■どうも、民俗学というものにあまりいい印象がない。例えば、住宅や農機具や農耕儀礼の話を展開しても、それは日本を出ない。農機具など、農作業をやる世界の全地域にもあるのに、日本のものしか取り上げないのが民俗学で、知の狭さにうんざりしているのだ。…

1998話 最近読んだ本の話から その9

■神保町を歩いていて、「そうだ、鉄道のトイレの本が出たばかりだったな」と思い出したが、正確な書名を思い出せない。新聞の書籍広告でちょっと見ただけだから、記憶が乏しい。三省堂があれば、コンピューター検索ができるのだが、目下新築工事中(まだ、取…

1997話 最近読んだ本の話から その8

■兼高かおるの第1作が新装復刊された。『世界とびある記』(ビジネス社、2019)で、元の本は、同じ書名で光書房から1959年に出版されている。日本人の海外旅行の資料として、書店で新装版を見つけてすぐ買ったのだが、巻頭に光書房版の表紙写真が載っている…

1996話 最近読んだ本の話から その7

■細野晴臣が大好きだという台湾の高校生が主人公で、それは作者自身らしい。『緑の歌 収集群風』上下(高 妍、KADOKAWA、2022)にはなぜか、翻訳者の名がない。「翻訳協力」として竜崎亮と言う名が奥付けに記されているが、表紙にも扉にも翻訳者の名が、なぜ…

1995話 最近読んだ本の話から その6

■『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』(若林正恭、文春文庫、2020)を読んでいて思い出したことと、気がついたことがある。かつて、中谷美紀の『インド旅行記』(幻冬舎文庫、2006)が出たころの、天下のクラマエ師こと蔵前仁一さんがこんなことを…

1994話 最近読んだ本の話から その5

■『全国アホ・バカ分布考―はるかなる言葉の旅路』(新潮文庫)や『全国マン・チン分布考』 (インターナショナル新書)などの著作がある放送人(朝日放送)が、今度はここ数十年間に若者が使うようになった表現から、芸人起源ではないかと疑問から調べていった…

1993話 最近読んだ本の話から その4

■自称はBroadcaster、第三者が紹介するときの肩書はDJや音楽評論家のピーター・バラカンは1951年イギリス生まれ。1974年に日本に来て音楽産業で仕事をするようになるのだが、来日間もないころの話をラジオでしていた。 日本人が「すごいバンドだぜ」と話して…

1992話 最近読んだ本の話から その3

『世界でいちばん旅が好きな会社がつくったひとり旅完全ガイド』に関しては、ちょっと触れたくらいで終わりにする予定だったが、旅のことなので、ついつい長くなった。 この本の第9項は、(ひとり旅は)「やっぱり、英語が話せないと難しいですか?」という…

1991話 最近読んだ本の話から その2

■古本まつりで買ってすぐに読んだ本の話から始めるか。破格の安値だから買ったのは『世界でいちばん旅が好きな会社がつくったひとり旅完全ガイド』(TABIPPO、いろは出版、2017)で、文字が極端に少ないからすぐに読み終えた。 この本はひとり旅をしたいなと…

1990話 最近読んだ本の話から その1

ここひと月ほどの間に読んだ本の話をしようかと思うが、まずはもっとも最近の神田古本まつりの話題から。 毎年開催される神田古本まつりにはたいてい出かけているが、「収穫あり」といえるような本にであうことはなかなかない。何万冊もの本が路上で売られて…

1989話 橋を渡る その12(最終回)

ナイロビで1年くらいは生活してみようかと思っていたが、東アフリカの生活が半年過ぎると、だんだん飽きてきていた。もっと刺激が欲しかった。変化のある食事をしたかった。ぜいたくはいわないが、もう少しうまいものを食いたかった。そんな不満を抱えてい…

1988話 橋を渡る その11

「海上の道」と言えば、柳田国男の本が思い浮かぶが、そういう文化の経路の話ではなく、実際に海の上を走る道路の話をしようか。 浅い海の支柱を立てて道路を渡すという建造物は、道路なのか橋なのかよくわからない。海や川の両岸を結ぶものが「橋」で、水上…

1987話 橋を渡る その10

私はどうやら、鉄骨むき出しの建造物が好きらしい。スカイツリーよりも東京タワーの方がはるかに好きだ。だからエッフェル塔に好感を持つのだが、なぜかパリにいたときエッフェル塔のことは頭にまったく浮かばなかったので、実物を見た記憶がない。 話はそれ…

1986話 橋を渡る その9

写真やテレビや映画の風景を見てその地に行ってみたいと思う人は多い。そのなかで、実際に出かける人もいる。古くはスイスの風景だろうし、南太平洋の青い海と白い砂へのあこがれを体験した人は多いだろう。これがオーロラとなるとそうは多くないし、マチュ…