276話 アジア雑語林 移転再開 

 昨年12月以来の、アジア雑語林である。本格的再開は次回からにして、いままでのいきさつから、説明しておこう。
 この「アジア雑語林」というのは、神田のアジア専門書店、アジア文庫の店主大野信一さんの企画で、原稿執筆を依頼されたもので、2002年11月26日の第1回からアジア文庫のホームページで始まっている。週に1回程度の更新で、順調に続いてきたのだが、店主の体調不良が原因で、2009年12月の275回で更新が止まったままになっていた。店主は、残念ながら、2010年1月に亡くなり、この「アジア雑語林」をどうするか、先行きを考えているうちに時間が過ぎ去ってしまった。ちなみに、いままでの文章は、アジア文庫のホームページで今でも読める。
 私はアジア文庫にメールで原稿を送るだけで、あとの編集などの作業はすべて店主任せだった。店主亡き後、私の力ではどうすることもできず、アジア文庫を引き継いだ内山書店は、日々ホームページの管理を続けていく余力はないようなので、旅行人のホームページに移転して再開することにした。
 考えてみれば、以前、蔵前さんに、「旅行人もホームページを作るから、なにか書いてよ」と依頼されたことがあったが、すでにアジア文庫で連載していたので、せっかくのお誘いを断ったといういきさつがあったから、これが巡り合わせというものか。
 世間的に言えば、このページはブログということになるのだろうが、私は身辺雑記を書く気はない。自分の身辺雑記を、おもしろいとは到底思えないからだ。時代遅れだと思うだろうが、私は雑誌の連載のように考えて、原稿を書いてきた。いままで書いた文章を全部集めると、おそらく400字の原稿用紙にして千数百枚分になるだろうが、たいして読まれていないという現実が、連載を再開することをためらった理由のひとつでもある。「どうせ、読むヤツはいないのだ」と思ったからだ。
 ところが、更新が止まると、私の命も止まったのではないと心配する友人が現れたり、「あの、アジア雑語林、どうした?」と電話をかけてくる友人もいて、中途半端なままじゃ、大野さんにも申し訳ないという気にもなって、再開することにしたのである。

 というわけで、次回は第1回の原稿を発表したまま尻切れトンボになっている、ユースホステルの話の続きだ。