301話 読書の話 本を探すいくつかの方法

 こういう話を何度か耳にしたことがある。
 「インターネット書店というのは、ピンポイントで本を探して買うには便利だが、本屋の棚を眺めていて、まったく知らなかった本を偶然見つけて、読んでみたらおもしろかったというような体験はできない。ネット書店よりも、やはり、現実の本屋がいい」
 この感想を否定はしないし、私も本屋巡りが好きなのだが、ネット書店だって、使い方しだいでは、本探しの散歩ができる。ややプロ的なやり方だが、ちょっと紹介してみようか。「プロ」というのは、プロの読書人ということだ。狭い意味では、書評や本の紹介を商売にしている人のことだが、もう少し意味を拡大すれば、本を読むことが仕事とつながる人たちのことで、ライターや小説家やジャーナリスト、研究者や編集者や書店員などをさす。
 私の場合は、こうやって本を探すという実例を、いくつか紹介してみよう。インターネット以前なら、書店の棚を眺めるか、新聞や雑誌の書籍広告や書評欄、学術書などの「参考文献」リスト、出版社のパンフレット、そして「これから出る本」や友人知人の推薦などいろいろあったわけだが、新聞の書評欄というのは、私にはほとんど役に立たない。仮に、一年間に1000冊の本が紹介されるとして(1回20冊なら、こういう計算になる)、読んでみたいと思う本は数冊程度で、実際に買うのは1冊あるかどうかだろう。その程度の重要度でしかない。一方、書籍広告は有効で、新刊情報の多くは新聞の書籍広告で得ている。「最新刊を1日でも早く読みたい」という欲望の無い私は、毎日のように新刊書店に出かけたり、インターネット書店で、最新刊のチェックに励むという習慣はない。
 さて、私のアマゾン(インターネット書店です、念のため)遊びは、こうやる。
 新刊の場合は、ごく普通のやり方で、気になる著者名やテーマで検索して点検する。おもしろそうなタイトルの本が見つかっても、その内容が詳しく出ていない場合は、出版社のホームページや国会図書館など図書館の資料で、目次などの情報を得る。この「アジア雑語林」ですでに書いたように、読みたい本が近所の図書館にあれば、貸し出し予約をする。
 古本の場合は、こういう遊びをやる。
1、Amazonの本のページを出す。
2、「プラウズ」のなかの、「人気コーナー」の「古本・古書・希少本」をクリック
3、「古本カテゴリー」ではなく、「古書カテゴリー」のなかの「歴史」部門の「地理・地誌・紀行」をクリック。
4、数万冊の古書が出てくるので、とりあえず「価格の安い順番」に並べ替えで、チェックしていく。全冊点検など、もちろんしないが、売り値が数百円になって、送料(250円)と合わせて500円くらいになったらやめるのを、一応の目安としている。そこまでに1時間くらいかかるから、たいていは、くたびれていやになる。こういう遊びには、50冊や100冊を表示可能にしてくれればありがたいのだが、そういう便利なシステムをアマゾンが採用しないのは、広告費を稼ぎたいからか。
 書名、著者名、出版社、出版年を頼りに本の内容を判断していくので、ある程度の知識がないと本は選べない。「この出版社の本なら、いくらおもしろそうでも送料ともで400円までか」とか、「内容はわからないが、1950年代の旅行記なら、高いが買っておこうか」などと考えるわけだ。自分がどういう傾向の本を読みたいのかという嗜好がはっきりとわかっていないと、なかなか難しいという点で、プロ用の本選びである。
 「地理・地誌・紀行」の次は「アジア史・東洋史」や「ジャーナリズム・新聞」など別のジャンルで同じようにやる。こういうネット書店遊びを数カ月に1回くらいやる。
 国会図書館遊び
1、国会図書館の蔵書検索・申込システムNDL−OPACに入る
2、「一般資料の検索(拡張)/申し込み」をクリック
3、例えば、タイトル欄に「韓国 ガイド」、出版年に「1970年まで」と記入し、検索すると、旅行ガイドは日本交通公社の『東南アジア』の1966年と69年の2冊しかないことがわかる。だから、国会図書館の蔵書では、70年代以前に出版された「韓国」と名がついたガイドブックはないらしいとわかる。念のため、「出版者」の欄に「実業之日本社」とか「ワールドフォトプレス」などと、旅行ガイドを出版している会社名を入れて、確認作業をする。あるいは、出版年を1年ごとに区切って、書名に「韓国」が入っている本を点検していくと、半日がかりの作業になる。
あるいは、キーワードで図書検索して、気になった本が見つかり、読みたければネット古書店「古書通販カタログ」http://book.cata-log.com/old/ などで調べることもある。よほど特別な本でない限り、国会図書館に出かけて本を読む気にはなれない。
 近所の図書館の検索ページでも、国会図書館と同じように「キーワード」検索ができるので、なかなか重宝している。他府県の図書館や大学の図書館の蔵書検索も簡単にできるが、そこまでの紹介はここでは必要ないだろう。
 英語の本も、基本的にはアマゾンか紀伊国屋のHPで調べるが、見つからない場合は、“AbeBooks.com”http://www.abebooks.com/ で調べる。送料がけっこうかかるから、どうしても欲しい本だけ使う。私がバンコクの古本屋で買った1970年代にバンコク自費出版された本も、ここで出品されているのを発見したことがある。かなりの貴重本も入手できる。日本のアマゾンではなく、イギリスやフランスなどのアマゾンで検索して、日本のアマゾンには出ていない本の情報を得るのに使うこともある。
 タイ関連の本は、タイの書店や出版社、あるいはチュラロンコーン大学内の書店のHPなどで検索するが、専門的になり過ぎるので省略する。
 最新刊には大して興味がないが、一応、文庫と新書はチェックしておく。その方法はいくらでもあるが、私の好みはジュンク堂のHPhttp://www.junkudo.co.jp/ の、「ジャンル別ベストセラー」→文庫・新書。[ベストセラー 最新刊]の「最新刊」をクリックして、「50冊を表示」にしてチェックする。アマゾンでは、出版社別になって、文庫や新書の最新刊だけ調べるには煩雑だからである。