6月30日のNHKプレミアム「アメージング・ボイス」で、ポルトガルの歌手Dulce Pontesが登場するらしいが、その話の前に、彼女の名前をどう発音するのかという疑問について語りたい。
「旅行人」最新号に、ポルトガルのファドの話をちょっと書いたのだが、恥ずかしい事実を公表すると、実はあの原稿は発表したものの3倍くらい長かったのだ。素人じゃないんだから、例えば、編集部から「5000字程度で」という注文なら、その長さに合わせてきちんと書けるのが、プロの最低限の能力というものなのだが、ポルトガルの原稿の場合、書いていると楽しくなってどんどん長くなり、それでも、「あとで削ればいいや」と思って書き続けたのに、削ろうとするとなかなか削れず、蔵前編集長にはご迷惑をかけてしまった。
いたしかたなく削った部分に、この女性歌手の名前に関する部分があった。
日本の音楽マスコミやCDには、「ドゥルス・ポンテス」という表記が多いようだが、本当にそう読むのだろうか。インドネシア語じゃないんだから、Dulceで「ドゥルセ」ではないだろうし、ここはポルトガル語の教科書通り、「ドゥルセ・ポンテス」にしておこうと思った。
リスボンのファドとポルトガル・ギターの博物館の売店で、この歌手のCDを見つけたとき、「そうだ、なんと読むのか、聞いてみよう」と気がついて、職員に質問した。すると、私の耳には「ドゥシー・ポンチス」と聞こえた。それ、ブラジル発音じゃないの。もう、どうでもいいやという気持ちになった。
というのは、私が初めてYou Tubeなるものを知ったときだから、2006年か2007年ころだと思うが、「fad」や「Dulce Pontes」で、検索遊びをやっていたときに、感激的な映像が流れてきた。歴史的名シーンだといっていい。ポルトガルのテレビ局のスタジオに初々しいドゥルセが登場し、客の前でスタジオライブを行う。ドゥルセのすぐ前で、にこにこしながら歌を聴いているおばさんが、かのアマリア・ロドリゲスだと私でもわかる(私の誤解だったら、とんだ笑い物だが・・・)。この映像だ。
http://www.youtube.com/watch?v=bJLjE_g9HFM&feature=related
さて、このスタジオライブだが、司会者の話に耳を傾けると、「ドゥース・ポンチ、ドゥース・ポンス」と言っているように聞こえる。なんて、こった。
「旅行人」では、私は「ドゥルセ・ポンテス」と表記したが、この表記だけが正しく、ほかは間違いだと言っているわけではない。正直言って、もう、どうでもいいやという心境である。
さて、ドゥルセがどういう形でNHKの番組に出演するのかわからないが、やや奇異な感じがする。ファドの王道を歩む歌手ではないし、この番組に登場した歌手のなかでは、イタリアのミーナを除けば、彼女はかなりの売れっ子なのである。アンドレア・ボッチェリやエンニョ・モリコーネとも共演しているので、いままでのこの番組の流れからすると、ちょっと奇異に感じるが、まあ、当日の番組を楽しみにしておきましょう。