467話 電波障害のなかの音楽生活 

 
 いつのころからか、我が家はテレビやラジオの受信に障害がでるようになった。テレビは、いわゆる「ゴースト」がでる。特にNHKがひどいので、NHKに受信相談したら、係の人が機材を持ってきて調査をしたのだが、「はい、悪いですね」というだけで、何の対策法もなかったのだが、デジタル放送に変わってゴーストは消えた。
 ラジオは雑音が多い。まともな状態ではFM放送が聴けないので、電気屋のアドバイスを受けて、テレビアンテナをFMアンテナ兼用にしたら、FM問題は解決した。ところが、テレビがアナログ放送からデジタル放送に変わったら、その仕組みはまったくわからないのだが、デジタル放送用のアンテナはFMアンテナ兼用にはならないそうで、独立したFMアンテナをベランダに立てることになった。
「わたし、この仕事、もう40年近くやってますが、FMアンテナを立てるなんて、これが2度目くらいですよ」と、なじみの電気屋のおっちゃんは言うが、アンテナを立てないと雑音しか聴こえないのだから、いたしかたない。
「この近くに、無線かなんか、やっているウチがありますか?」と聞かれたが、さて、わからないが。巨大なアンテナを立てた家は、今はない。
 AM放送はアンテナをつけてもだめだ。中古屋で買ってきた古いラジカセだと、なんとか聴くことができるのだが、ステレオではAMラジオが聴けない。FMからAMに切り替えるには、ステレオからラジカセに切り替えなければいけないのが面倒で、うんざりしていたときにこの世に登場したのが、インターネットラジオradiko.jp(ラジコ)だ。これでラジオ問題はほぼ解決した。
 そのころからYouTube遊びをやるようになった。初めは調べ物に使っていたのだが、しだいに音楽プレーヤーとして使うようになり、そしてつい先日、NHKもインターネットでラジオを聴くことができる「らじる☆らじる」というサイトがあることを知り、これでラジオ問題は解決した。全国のラジオも有料ならば視聴することができると知ったが、そこまでやったら、CDを聴く時間がなくなる。
 パソコンが音楽プレーヤーになったら、やはり音質が気になってきた。オーディオ・マニアが求める「いい音」は、金銭的にまかなえないだけでなく、部屋を震わす大低音などに包まれると、とてもじゃないが本を読んでいられなくなるから、財力に見合った「そこそこの音」を考えたら、BOSEのもっとも安いスピーカーがいいのではないかという結論に達し、さっそく買ってきた。
「ラジカセにしては、いい音だ」という程度の音だが、いままでの5980円のスピーカーとは格段に違う音だ。
 そして、今、今年、遠い世界に旅立った母や、中村勘三郎小沢昭一のことなどを考えながら、南アフリカ出身のピアニスト、アブドゥーラ・イブラヒム(旧名 ダラー・ブランド)のこんな曲を何度もくりかえして聴いている。深夜に、コーヒーか酒を飲みながら、こういう音楽はいかがでしょうか。
Abdullah Ibrahim & Ekaya - Water from an Ancient World (fragm.)
http://www.youtube.com/watch?v=Rt1ZAtC9TUY

 スタジオ録音よりも、このライブのほうが断然いい。

 というわけで、また来年。