507話 日々雑感 その2

■どこの家庭でも同じだろうが、新聞の勧誘がよく来る。先日来た勧誘は、いままでとちょっと違った。
「お宅、朝日ですよねえ」
「はい」
「でね、ひと月だけ、休んでもらえません? その間読売をとってもらって、また朝日と契約してほしいんですよ。洗剤とか、いろいろつけますよ」
 読売は嫌いだから、その提案は断ったが、言われたとおりにすれば、販売拡張員は、読売と朝日の両方から1ポイント獲得ということになる。契約をとることだけが重要だから、現在の契約を破棄させても、利益になるのだ。
■仕事の資料として、また『古川ロッパ昭和日記』(晶文社)を読んでいる。なにしろ、昭和9年から35年までの日記で構成した全四巻で、各2段組み900ページ以上という本だ。各巻6825円だから合計27300円ではさすがに高くて手が出なかったので、図書館で借りてきた。こういう高額書が図書館にあるので、ありがたい。この日記はさまざまな事柄が細かく書いてあり、じつにおもしろく、東京史や芸能史など多方面で参考になるのだが、私の場合食文化関連の話題が大いに参考になる。例えば、戦前編(9〜15年)をていねいに読むと、東京には西洋料理店が多くあり、モダンな街だということがよくわかる。このモダンさは戦争によって中断されるのだが、昭和10年は昭和30年のようだ。この本とは関係ないが、幻となった昭和15年東京オリンピックでは、NHKはテレビ中継の準備をしていたのだ。
食文化の話でいえば、昨今またブームとなっているスパゲティーナポリタンだが、これは「戦争直後、米軍に接収された横浜グランドホテルで、日本人料理長の手によって生まれた」と多くの本に書いてあり、だからテレビもそれをそのまま鵜呑みにしている。しかし、このロッパの日記では昭和9年に日本橋三越の食堂で「ナポリタン」という名のスパゲティーを食べたという記述がある。調べれば、それ以前に、三越のお子様ランチにはケチャップで炒めたスパゲティーが添えてあった。スパゲティーナポリタンの歴史は、テレビ番組で伝えるほど単純なものではない。
■回転寿司の何軒かの知識だが、どこも粉末の茶を使っている。100円払ってもいいから、茶葉を用意してくれないか。魚と同じくらいに、お茶にも神経を使ってもらいたい。それから、時代なのだからしかたがないのかもしれないが、プリンアラモードやチョコレートケーキを眺めながら寿司を食べたくない。回転寿司屋に行かなければ、そういうものを見ずに寿司が食えるのはわかっているんだけどね。
Amazonの中古品売り場マーケットプレースでは、本の送料は250円だが、CDは340円。薄くて軽いCDがこんなに高い理由がわからない。中古CDといえば、ブックオフでは、本に比べてCDの値段が高い。高くても売れるから、ああいう高い値段をつけているのだろうが、そんなに売れるのかなあ。中古CDに関して言えば、ディスク・ユニオンの方が安い。当然ながら、品ぞろえは比べ物にならない。まあ、品ぞろえの方向が違うのだが・・・。
■映画館で映画を見ている人の多くは、右手の指に力が入っているんじゃないだろうか。だらだらしたシーンだと、早送りのボタンを押したくて、つい指に力が入る。当然、早送りはできなくて、なおいっそうイライラすることはありませんか?
■テレビの旅番組で、「さあ、これからひとり旅が始まります」などというナレーションのなか、その人が旅するシーンが出てくることが時々ある。視聴者は、ディレクターやカメラマン、海外物なら通訳(コーディネーター)などスタッフがいることはわかっているのだから、そういうつまらないナレーション入れないこと。旅番組は、構成がほとんど同じだから、面白味がない。「この辺に、おいしいラーメン屋さんがあると聞いたんですがねえ・・。あっ、あれかな?」などという小芝居も、いいかげんにやめてほしい。すでに店の取材許可を得て、リハーサルもやっていることはわかっているんだから。テーマを絞ると、視聴者が減るので、どこの局のどの番組も、お子様ランチ的な内容に終始している。テレビと海外旅番組については、別の機会に改めて書く。
アメリカのテレビドラマ「24-TWENTY FOUR」を、はからずしも最終話まで全編見てしまったのだが、最終話もまた、いつものように、CTU(テロ対策ユニット)内部にテロ集団への内通者があるという設定で、テロを取り締まる組織のセキュリティーがもっともいいかげんなのが、このドラマ最大の特徴だ。CTU本部が襲われたこともあるし、停電したりと、じつに危ない組織なのだ。ほかに、登場人物たちの移動時間が短すぎるといった根本的な問題もあるなあと、フィクションの苦手な者は思うのだが。
■インターFMには、東京都港区の英語広報番組があるのだが、そこで港区は「Minato city」としている。区はcityとして、行政機能としては不自然なことはないのだが・・・。道路標示でも、「新宿区 Shinjuku city」とある。東京都23区の場合、それぞれの区のホームページでは、北区が「City of Kita」となっているのを例外として、ほかは区をcityにしているのだが、もう少し調べてみれば、おかしなことがわかる。例えば、目黒区が出している外国人向けの小冊子(日本語、英語、韓国語、中国語表記)に載っている「役に立つ連絡先」は、「東京都外国人相談」にしろ、長い名前の「東京入国管理局外国人在留総合インフォメーションセンター」にしろ、英語表記の住所は「○○―ku」になっている。中国語の文章では、住所は基本的に日本語そのまま、韓国語でも区はハングルで同じ意味の「
구ク」を使っている。つまり、住所ではMeguro-kuにするが、看板などはMeguro cityにしている。その方が「かっこいい」と考えているのだろう。
さて、そこでだ。大阪市や福岡市の「○○区」の場合は、ローマ字表記するなら「○○-ku」か、「ku」を無視して表記するかのどちらかが考えられるが、まだほかにあるだろうか。
■スーパーの肉売り場には、ブタのブロック肉はあるのに、牛肉をブロックで売らないのはなぜだろう。「需要がないから」というだけの単純な理由からだろうか。
■近所のスーパーで合計金額ぴったりの金額を支払うと、「レシートのお返しです」といって、レシートを渡す。「あなたにレシートを貸した覚えはない!」と、いつも心の中で叫ぶが、大人げないので、一度も口に出したことはない。
■電車内で化粧をしたり、飲食をする人がいるという話をよく聞くし、私も実際になんどか見ている。おにぎりや弁当を食べていたのはいずれも女。おにぎりを食べていたのは、別の日の目撃でありながら全く同じ食べ方をしていたおばさんふたり。ビニール袋にふりかけをまぶしたご飯が入っている。袋に入ったままそのご飯を握り、ほんのひと口食い、袋を閉じて、また握る。この動作をあわただしく繰り返している。病気なのかもしれない。
■きのうは、ホームでもっとすごい人を見た。やはり、40代の女。髪が濡れていて、トートバッグから取り出した厚手のタオルで髪を拭いている。シャワーを浴びて、そのまま駅に来たという感じなのだ。服装は、ちょっとおしゃれだが、当然すっぴん。これから車内で化粧をするのだろう。タオルをバッグに戻して、1分もたたずに、またタオルを取り出して髪をふく。この動作を繰り返しているから、異常さを感じる。