606話 なぜか雑誌の台湾特集

 最近の雑誌で、台湾を特集したものが多くなったような気がする。その昔、女性の旅行客が香港に多く行った時代があり、香港が中国に返還された1997年ごろから、香港旅行と香港映画と香港ポップの人気が一気に落ちて、しばらくして突然韓国に人気が集まり、ここ数年はその波が台湾に向かっているように思う。
ここ数年の雑誌で台湾を扱ったものを、いくつかあげてみよう。
2011年7月号「旅」(新潮社)[週末、台湾でお茶を]
2011年8月号 「FRaU」(講談社)[ありがとう、台湾]
2011年11月号「美術手帖」(美術出版社)[アジアへ、アートの週末旅行]
2012年1/12号 「hanako」(マガジンハウス)[你好台湾。]
2012年2月号 「madame FIGARO japon」(阪急コミュニケーションズ) 綴じ込み付録[楽しいよ!台湾の冬休み]
2012年2/8号 「anan」(マガジンハウス)[台湾に行って、キレイになる]
2012年8月号 「日経おとなのOFF」(日経BP社)[第3特集 爽快!台湾温泉]
2012年9月号 「FRaU」(講談社)[これからも、台湾]
2012年10月号 「MORE」(集英社)[記事 美保&みっこのまんぷく乙女旅in台湾]
2013年6月号 「SPUR」(集英社)[食いだおれ台湾]
2013年8月号 「日経おとなのOFF」(日経BP社)[台湾ローカル線の旅]
2014年2月号 「ダ・ヴィンチ」(KADOKAWA)[本好き女子のための台北]
2014年5月号 「ROLa」(新潮社)[台湾、福なる時間!]
2014年7月号 「VOLT」(徳間書店)[温泉天国 台湾]
2014年7/9号 「anan」(マガジンハウス)[週末、台湾]
2014年8月号 「東京人」(都市出版)[東京人的台湾散歩]
 ざっと調べただけで、これくらいはある。ほかにムックや週刊誌や専門雑誌の特集もあるだろうが、どうも、2011年あたりから増えていることが分かる。台湾を取り上げるのは女性雑誌に多く、だからどの雑誌も「観光に、グルメ、エステ、ショッピングの3本柱」という構成の実用ガイド。これは、どこの国や地域を取り上げても、構成は同じ。こういう構成でやってきた韓国特集を、2011年ころから台湾特集に方向転換をしたのではないかという気がする。李明博大統領の竹島上陸は2012年8月。そして中国の反日暴動も同じ時期だから、それ以後、反韓国と反中国の感情が、「やさしい台湾」の特集に向かわせたような気がするのだが、こじつけだろうか。
 別の理由ではLCCのスクートが日本と台湾を結ぶことになり、航空運賃が一気に下がったことも、台湾特集と関係があるだろう。時期にもよるが、成田―桃園往復航空券は総費用込みで2万円ほどだ。2013年にはバニラエアーも就航し、台湾旅行が国内旅行の費用になった。
 男性雑誌の「鉄道」「温泉」というのは、韓国でも同じような特集記事を作ったのかどうかわからない。私は韓国ウォッチャーでも台湾ウォッチャーでもないので、ごくたまに書店で立ち読みはするが、買うことはなかった。だが、あの「anan」は台湾をどう扱うか気になって、買った。意外も驚きもなかった。この雑誌だけではないが、やけに薄っぺらい。広告があまり入らないのだ。「東京人」は、「食べ歩いて、一丁あがり」という構成ではないので、買ってみた。私は建築に興味があって、台湾建築の資料はいくらか読んでいるのだが、それでも興味深い記事もあった。私は雑誌をめったに買わないのだが、「雑誌の定価と内容の深さは正比例する」という法則はあるのだろうか。「東京人」は「旅行人」に似て、広告が極端に少なく、印象も似ている。
 「東京人」の台湾特集はよく出来てはいるのだが、私の好みの方向ではない。「グルメにエステにショッピング」にしか興味を示さない雑誌(とムックとガイドブック)は嫌いだが、「懐かしき、すばらしい日本時代の台湾」しか見ない台湾特集(とそういう本)もほとんど読む気がしない。女性雑誌も男性雑誌も、読者の関心は非常に狭く、毎度おなじみ企画の連続だ。そして、いつも思うのだが、前川好みの企画を実現する雑誌は、まあないよな。だから、私はめったに雑誌を買わないのだ。
 それはそうと、日本の女性誌のタイトルは、やはり変だ。これは日本女性の好み(西洋かぶれという好み)を反映したものだろうか。