628話 パソコン導入直後 その5

 旅行人編集部で、「パソコンを買ったよ」という話をしたら、編集者の木村さんが、「コンピューターに詳しい友だちとは仲良くしておいた方がいいですよ。いろいろ助けてもらうことが出てきますから」といった。そのアドバイスの意味はすぐにわかった。パソコンに不都合が発生すると、アジア文庫か旅行人に電話をして、教えを乞うことになったからだ。アジア文庫の大野さんも、旅行人スタッフも、じつに親切に教えてくれた。現在も、この「アジア雑語林」の保守点検、運営サービスを担当してくれているのは、旅行人元編集者の田中元さんだ。私は文章を書く以外何もできないので、お世話になりっぱなしなのに、お中元もお歳暮も送ったことがない(元さん、そのうち何か送りましょう。練馬区の住所は変わっていないんですか?)。
 旅行人のHP、「遊星旅社BBS」を今はほとんど読まなくなったが、以前は「教えて板」という旅行の質問をする場所に、「バリ島に行きたいんですが、航空運賃はいくらですか?」といったような、腰が抜けそうな質問があったのを覚えている。自分で調べずに、なんでも気安く他人に聞くヤツに腹が立った。情けないと思った。「お前なあ、そんなの自分で調べなさい」とハナで笑っていると、ふと、その程度の質問を、パソコンに関してはこの私がしているに違いないということに気がついた。不案内な分野だと、何もわからないことがあるのは当たり前だ。しかし、できるだけ、独力で解決したほうがいいだろうと思うようになった。旅行人の編集部員が減り、アジア文庫の大野さんは亡くなり、人様のご厚意にいつまでも頼っていてはいけないと少しは反省した。
 コンピューターに不都合があったり、気になることが起これば、「パソコンに聞け」というのが、この世界の定石なのだと、遅ればせながら気がついた。つい先日も、中国の変なソフトが忍び込み、突然、いままで使っていたツールバーが消えてしまった事件が起きて、しかし簡単に削除できなかった。グーグルで対処法を調べると、「こうやって、アンインストールすればいい」という方法を教えてもらい、すぐに解決した。
 また、最近、「NTTの代理店の〇〇ですが・・・」という不審なセールス電話が多いのだが、これもグーグルで調べれば、「要注意」だと教えてくれた。
 現在、気になっているのが、「PCの能力が低下しています」と言う広告で、その広告の削除方法はネット上にいろいろ出ているが、私の能力では理解できない。「コントロール・パネル」からのアンインストールはできない。
 「インターネットの教え」でも、素直に「はい」と従えないのが、「ダウンロード」という語だ。指示に従ってソフトをダウンロードしたら、とんでもない事態が発生することがありそうで、怖い。「DVDのコピー」など、複雑だし、怖いし、手を出していない。というわけで、私のパソコン生活は、海外旅行に例えれば、1日2食付のツアーのようなものだ。個人旅行など、とてもじゃないが怖くていやだというレベルだ。「トランジット」などと言う語が出てくると怖気づく人がいるように、「プワウザ」とか「日本語化」とか、わけのわからないコンピューター語が出てくると、もうそれだけで恐れおののく。私のパソコン力は、旅行人のHPにある「教えて板」に質問するレベル以下なのだ。
 皆さまのお世話になって、今日までなんとかパソコンと付き合って来られた。「こういうことができたらいいなあ」と思うことはいくつかあるが、「できなくたって、困ることはないや」と思い、そのままにしている。
 最近このコラムを読み始めた人に、改めていくつかの「お断り」を書いておこう。
 この文章はワードで書いて、Hatena ::Diaryというブログの画面にコピーしているのだが、いくつもの不都合が起きてしまう。まず、1字下げがないように、改悪されてしまう。1字下げで書いているのに、コピーしたとたんに、1字下げがなくなり、改行すると1行アキになってしまう。だから、コピー後に、いちいち1字下げに直すが、改行1行アキは直しようがないので、間抜けな感じになっている。不都合な2点目は、写真などワードに取り込んだ画像が、コピーすると消えてしまうのだ。友人の話では、複雑な作業をすれば写真を取り込むことができるらしいのだが、私の技術と根気では到底無理で、ずっと文字だけのコラムになっている。
 ブログにおける文字と写真の話は、別の機会に。