825話 ラジオ番組テーマ曲 その1


 よく行く中古CDショップでは、うれしいことにときどき「10枚1000円セール」をやっている。30枚買ったとして、そのジャンルや歌手をすでに知っているというのは5枚程度で、あとは勘によるジャケット買いだ。その結果、「なんだ、これ」と失望するのはせいぜい数枚だから、歩留まりはいい。
 数年前のある日にまとめて買ったCDの1枚はラムゼイ・ルイス。好きなジャズピアニストだが、このCDは知らない。「古き良き時代のジャズ」というデザインではなく、私が嫌いな「フージョン」の匂いがする。高ければ買わないが、100円なら冒険ができる。買ったからには1度は聞いておこうと、プレーヤーに挿入。流れ出た音に驚いた。Ramsey Lewis ”Sun Goddess”
https://www.youtube.com/watch?v=dS463tbX-HE
 調べて見れば、1974年の発売。1曲目の”Sun Goddess”がアルバムタイトルで、日本盤タイトルの「太陽の女神」はその翻訳。ラムゼイ・ルイスと共に演奏しているのは、アース・ウィンド・アンド・ファイアー。ドラムのモーリス・ホワイトは、もともとラムゼイ・ルイスといっしょにトリオを組んでいたドラマーである。
 「この曲名に心当たりはないが、聞いたことがある。何度も聞いた記憶がある」とわかったが、そのときはそのままになっていた。それがつい先日、読書に疲れて遊びをしたくなった。気分転換にゲームを始めたり運動や家事をする人が多いのかもしれないが、私はパソコンで調べ物遊びを始めてしまう。
 この曲、「太陽の女神」をどういう状況で聞いたのだろうか。音楽番組でたまたま聞いたのか、ラジオ番組のテーマ曲だったのか記憶が確かではないが、どうやら、ラジオ番組のテーマ曲として有名だったらしい。放送時期がよくわからないのだが、1970年代後半以降の放送らしい。FM東京で週日、夕方6時から放送していた「丸井 ミュージック&モア 夜とよぶには早すぎて」のテーマ曲だったらしい。1970年代の後半や80年代に、夕方のラジオ番組をよく聞く生活をしていたわけではないので、私が聞いたのはこの番組だったのか、あるいは深夜の音楽番組だったのかは、やはりわからない。
 こうしたことのほかに、今回調べていてわかったのは、この番組のアナウンサー(ナレーター? DJ?)としてネットで名前が挙がっている「あいきょうこ」なる人物は、「阿井喬子」で元日本テレビアナウンサー。1960〜70年代にラジオをよく聞いていた少年には、かなり刺激的な低音のナレーションで記憶に残る名前だ。現在なら、近藤サトをもう少し低音にした感じか。
 もうひとつ、FM東京は会社名を「TOKYO FM」に変更したのだと思っていたが、1990年に「愛称の変更」があっただけで、会社名は昔から「エフエム東京」だ。
 この”Sun Goddess”に聞き覚えはあっても、曲名や演奏者名を知らなかったのは、私の興味範囲にはない音楽ジャンルだったからだ。私は流行りモノの音楽が好きではない。「流行りモノだから好きではない」のではなく、流行りモノと私の感覚に、広い溝と高い壁があるからだ。ポップロックとかヒップホップなどヒットチャートに登場するような音楽に感動することは少ない。そういう音楽ジャンルとは別に、「お利口さん」が好きな「おしゃれ」な音楽、例えばクロスオーバーとか、アンビエントプログレシブロック、渋谷系など、デザイナーとか広告関係者とか雑誌編集者などが六本木で酒を飲む場に流れているような音楽、ひと言でいえば汗を感じない音楽も好きになれない。それなのに、”Sun Goddess”を調べた勢いで、「ラジオ番組のテーマ曲調べ」を始めると、私が苦手なジャンルの音楽が多いということがわかり、それは時代背景が共通しているという理由がありそうだ。
 嫌いなジャンルの音楽なのに、「あの時代」が湧きあがってくる懐かしさもあって、しばし聞き入ることもある。次回も、検索遊びをやった結果の、そういう音楽の話をする。