827話 ラジオ番組テーマ曲 その3


 FM東京の「ジェット・ストリーム」に対抗する番組として企画されたに違いないのが、NHKの「クロスオーバーイレブン」だ。1978年から2001年まで続いた長寿番組だ。オープニングはこんな具合に始まる。2009年から随時放送されたテレビドラマ「深夜食堂」(TBS系)のオープニングナレーションを聞いた時、「これは、クロスオーバーイレブンがヒントだな」とひらめいた。
https://www.youtube.com/watch?v=nzZqnnnELR8&list=PLyYxL57C-ueAd_MUk7JrYbQ3h1z4R-NfL
 この曲は、Azymuthの「Fly over the Horizon」。アジムスは、ブラジルのフージョンバンド。もちろん、そういうことを知ったのは、つい最近だ。この番組のエンディングテーマもアジムスの「October」。
https://www.youtube.com/watch?v=z_Ffkev1O18
https://www.youtube.com/watch?v=y6S6EEyeB_w
 今回取り上げたラジオ番組は、1980年代に耳にしていたという共通点がある。「お洒落な音楽」は、バブル時代によく似合う。60〜70年代の番組テーマは面倒なので取り上げていないが、90年代以降は私にとっては特筆すべき番組がないのだ。80年代までは、ラジオが音楽を聞く唯一の手段だった。高いレコードを買うカネがあるなら、旅で使おうと考えていたから、少年時代からレコードを買う習慣はなかった。別の言い方をすれば、レコードを買ってまで聞きたい音楽には出会っていないということだ。ラジオから流れるジャズや民族音楽ワールドミュージックを聞いているだけで満足だった。
 そういう音楽生活が大きく変わるのは、タイ音楽の研究を始めてしまったからだ。タイで、音楽テープを買いあさった。散歩の途中で品揃えのいいテープ屋を見つけたら、長居をして買いまくる。そのあとまた店を見つけたら買うということをよくやっていたので、買ったテープは袋には入らず、段ボール箱に入れて、ヒモをかけて持ち運んでいた。こうして、千数百本のテープを買い、その後タイもCD時代に入り、CDも買い、日本では私もCDを買い集めるようになり、関心分野は世界の音楽に広がり、ジャズも本格的に聴き始め、ラジオで音楽を聞くことがしだいに少なくなった。
 タイ音楽からワールドミュージックへと関心が広がっていく中で、何度かラジオの音楽番組に出演することになった。アジア映画の上映会で知り合った音楽評論家の青木誠さんからの依頼で、NHKの昼間の番組にでて、アジアの食べ物と音楽の話をした。やはり音楽評論家の小倉エージさんが構成する番組に出て、タイ音楽の話をした。そしておそらく、その小倉さんが関わっていた番組だからなのか、クロスオーバーイレブンに出て、旅の話をしたこともある。そういういきさつがあり、「街も深い眠りに入り・・・・」というオープニングのナレーションを読まされたのだ。素人でもプロとの対談なら、相手がなんとかしてくれるだろうが、ラジオのひとり語りはきつい。講演よりもずっとまとまりをよくして、簡潔にかつ内容のある話を時間内にするのは難しい。恥ずかしいので、放送は聞いていない。
 1980年代から90年代には、音楽関係者、特にワールドミュージックに興味がある人たちと出会った。そのひとり、音楽プロデューサーの星川京児さんの訃報を、この文章を書いている日の朝読んだ。私より年下だとは知らなかった。雑誌「オデッセイ」の編集長と親しく、「オデッセイ」にも原稿を書いていたような気がする。星川さん自身が深くかかわっていた雑誌「包 パオ」のことなどを思い出した。
http://page9.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/k209062588#enlargeimg