888話 イベリア紀行 2016・秋 第13回


 唐突ですが、写真とカメラの話


 昔からこのブログを読んできた人は気がついたかもしれないが、従来の「改行1行アキ」というレイアウトがなくなり、印刷物と同じ普通の書式になった。いままで、このamebaブログの使用説明書をまったく読まずにブログを書き続けてきたが、改めて説明を読むと、「改行1行アキ」の設定を変えられることがわかった。
 そして、もうひとつ、旅行直前に、写真も簡単に載せられるらしいということもわかった。今までは、「そんなの、いいよ。面倒くせー」で終わっていたのだが、ふと、新しいことに挑んでもいいんじゃないかと思うようになった。特別な理由などないのだが、面倒くさいことを、ちょっと苦労したとしても、あえてやってみようかいう精神状態だった。
まず、カメラを買おう。いままで持っていたカメラは、十数年前にもらったもので、液晶画面がマッチ箱よりも小さい。カメラが小さいのはいいが、画面も小さいと、画面構成の確認ができない。
 カメラは、通称コンデジ(コンパクト・デジタルカメラ)に決めた。一眼レフは、重く、大きく、高いから、もう懲りた。20代からさんざん使ってきたから、長所も欠点もわかっていて、カネをもらう仕事で撮影するなら、やはり一眼レフがいい。しかし、自分の趣味で旅に持っていくなら、小さく、軽く、いつでもどこでも、「今だ!」と感じた瞬間にすぐ撮影できるカメラがいい。ミラーレスは高くて、重い。中途半端な気がする。前々からねらっていたニコンcoolpixのP300シリーズの4種のなかから選ぶことにした。すでに生産中止になっているカメラだ。普及品に比べると高価だが、コンデジ高級カメラと比べると安いという中途半端さが、一般には受け入れられなかったのかもしれないが、私が望むほとんどすべてがこのカメラにはあった。
 F1.8という明るいレンズがいい。35ミリ換算で24ミリからからという広角寄りなのがいい。子供の運動会やピアノ発表会で撮影をするわけではないのだから、超望遠はいらない。「シャッタースピード優先」と「露出優先」もできるのがいい。今のカメラだから、液晶画面は大きい。
 いままで、本格的にデジタルカメラを使ったことがない者が、外国でいきなり試用することになった。それでわかったことがいくつかある。
 まず、電池の消耗が激しいということだ。数日で、「電池の容量が少なくなっています」という表示が出てしまう。スイッチのon とoffを使いすぎると、電池が早くなくなると説明書に書いてあるが、数時間に数枚撮影するというような撮影だと、スイッチをonにすることが多くなる。いつも予備のバッテリーをバッグに入れておいて、散歩中にバッテリー交換をして、宿に戻って充電というのを、数日おきにやらないといけないのが面倒だ。こういうことは少しは予想はしていて、だからニコンの乾電池式カメラにしようか迷ったのだ。これほどすぐに電力がなくなるとわかっていたら、このカメラを買わなかったかもしれない。
 逆光だと、液晶画面が鏡のようになり自分の顔がうつる。これは困る。撮影対象がまったく見えなくなる。画面にいちいちカバーをかける以外に対策法はないらしい。だから、ファインダーを覗きたくなるのだが、そうなると一眼レフか取り外し式のファインダーをつけることになり、携帯性が悪くなる。FUJIFILM のミラーレスX-T2ならファインダーがついているが、20万円近くする。どれだけ使うかわからないカメラに、そんな大金を出す気はない。ソニーサイバーショットなら、ファインダー付きで比較的安いのがあるが、またカメラを買う気はない。買い物グセがつかないようにブレーキをかけないと、物欲の悪魔にとりつかれてしまう。
 気のせいかもしれないが、私が買ったデジカメは、コントラストが強くなるような気がする。日向と日陰のある画面だと、日向に露出をあわせて日陰が真っ暗になるか、日陰にあわせて日向が白く飛ぶかどちらかになりやすい。フィルムカメラの場合は、もう少し露出のバランスがとれていたのだが。
 旅先で撮った350枚ほどの写真を見て、「へたくそ。つまらん」と思った。雑誌の仕事で旅のページを作っているような写真で、普通のつまらない風景写真が多い。変なものを見つけて、すぐさま撮影するという余裕がない。これは、10年以上カメラを持たない旅をしてきたからだと思う。撮影することを忘れているのだ。もともと、写真が好きではないせいでもある。熱意がないのだ。旅先で「おもしろい」と思うことは多いが、すぐさま撮影しようという気にはならないのだ。ファインダーから覗いていると、四方の角まで神経を集中して構図を決めるが、液晶だと「どーでもいいや」と、いい加減になってしまう。
自分が撮影した写真を見て驚いたのは、縦位置の写真が多いことだ。3割以上が縦位置だ。ある写真家が、「映画監督がカメラを持つと、縦位置の写真を撮りたがるんですよ。映画は必ず横位置ですからね」と言っていたのを覚えているが、私は映画監督ではない。
 こうして考えると、私にとってもっとも使いやすいカメラは、スマホらしいとわかってきたが、スマホは持っていない。買う気もない。次の旅にもカメラを持っていくかどうかは、まだわからない。

 リスボンのアルファマ地区から、テージョ川を見る。14年前はこの眼下の、川沿いの眺めのいい部屋にいた。