894話 イベリア紀行 2016・秋 第19回


 リスボンの小さな博物館巡り


 リスボン散歩の話を続ける前に、遅ればせながら、リスボンという地名について書いておきたくなった。そういうことは、ガイドブックにはたいてい書いてないからだ。
 「リスボン」は、ポルトガル語ではない。英語でLisbonと書くので、リスボンは英語かというとそうとも言えない。英語の発音をカタカネで書くと、「リズバン」に近い音だ。だから、リスボンは、英語の表記Lisbonのローマ字読みカタカナ表記ということだろう。
ポルトガルの首都をポルトガル語ではLisboa(記号省略)と書くが、「リスボア」ではない。この綴りで、「リジュボーア」と発音する。Sは、単語のどの位置にあるかによって、shやzの音になる。スペイン語の音は、カタカナの塊となって飛んでくるので、「たぶん、こういう綴りなんだろうなあ」と想像して辞書を引くことができるが、ポルトガル語は基礎をきちんとやっておかないと、耳に入る音はふにゃふにゃした塊で、綴りが想像できない。知っている単語でも、聞き取れないことがある。スペイン語明朝体ポルトガル語は草書体だといえばわかりやすいか。
 さて、2度目の本格的リスボン散歩だ。北に行ってみた。空港とリスボン大学の中間、カンポ・グランデ地区だ。ここにリスボン市立博物館があると知ったので出かけた。地下鉄カンポ・グランデ駅の地上部に出ると、「広大な田舎」という地名を感じさせる田園地帯ではなく、オフィスビルがある新興地という感じだった。たぶん、ちょっと前までは、本当に田舎だったのだろう。大学都市という感じはあまりしない。
誰かの宮殿を利用したらしい市立博物館は、さほどおもしろいものではなく、展示品も少なかった。広い道路を隔てて向かいにある、ラファエル・ボンダロ・ピニェイロ美術館に行ってみた。風刺画家であり陶芸作家であり、いろいろな才能を発揮したRafael Bordalo Pinheiro(1846〜1905)の自宅を美術館にしたらしい。ちなみに、Bordalo Pinheiroが姓。イラストはおもしろいと感じたが、風刺画は例えポルトガル語が理解できても、その時の社会状況などを知っていないと内容がわからない。多才だから、写実的な陶芸もおもしろく、そこそこの時間は楽しめた。
https://jp.pinterest.com/hdaa/rafael-bordallo-pinheiro-1846-1903/
 市の中心部に戻って、トゥクトゥクの写真を撮りつつ、サント・アントニオ教会からリスボン大聖堂の坂道をのぼっていたら、左手に“Museu“という文字が見えた。さて、こんなところに博物館があったかなあと、真新しい看板を見た。
Museu do Aljube ―Resistencia e Liberdade
「抵抗と解放」というのはわかるが、Aljubeがわからないが、政治的な博物館らしい。入ってみたら、英語の解説もあってどういう博物館かわかった。長くなるので、その話は、次回に。

 リスボン大聖堂の隣りというか、向かいの、いま路面電車が走る脇の建物が、政治犯収容所だったとは。