936話 イベリア紀行 2016・秋 第61回

 コーヒーを探って その2


 中国国際航空の機内で隣り合わせたスペイン人医師と、コーヒーに関する雑談会をした。
 「スペイン人は、少量のコーヒーを1日に何度も飲むというのが好きなんだという気がしていまして、私のように1度にコーヒーをがぶがぶ飲むような習慣はないようですね」
 「そうです。基本はカフェ・ソロですからね。それにミルクをどれだけ入れるかということで・・・」」
マクドナルドもKFCも、コーヒーは少量ですが、例外的に大きなカップで出している店を知っていますか?」
 不遜だろうが、マドリッド在住のスペイン人にクイズを出した。
 「スターバックス!」
 即座に回答が出た。正解ではあるが、しかし、不充分だ。
 「ほかにもあるんですが、わかります?」
 さあ、これはわかるか。スペインのコーヒーだけを飲んでいるスペイン人には苦手な問題かもしれない。こういうクイズは、外国人の方が得意だ。やはり、医師は考え込んだ。回答は出てこない。
 「コスタ・コーヒーですよ」
 「ああ、そうか。そうだ、そうだ」
 コスタ・コーヒーはイギリス資本の世界的コーヒーチェーン店。マドリッドには3店舗あるそうで、私は王立劇場のなかの店によく行った。このチェーン店との最初の出会いはスペイン南部のマラガで、その時のことは、アジア雑語林689話に書いている。
http://d.hatena.ne.jp/maekawa_kenichi/20150424/1429836423
http://www.costa.co.uk/

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力がないと、片手では持ち上げるのに苦労するほど、たっぷりのコーヒーが入ったコスタ・コーヒーのアメリカン・コーヒー。カップが重いせいでもあるけどね。

 アメリカとイギリスのコーヒーチェーン店だけが、大きなカップでコーヒーを出しているということになりそうだ。それ以外の店のコーヒーは1杯100ccもないということだ。
 「スペイン人は、1回に少量しかコーヒーを飲まないのだから、スターバックスに来た客の何パーセントがスペイン人なのか気になっているんですが」
 「さあ、どのくらいいるんでしょうか。スペイン人でスターバックスに行くのは、外国風が好きとか、新しいスタイルが好きという人でしょうが、まあ、あまり多くはないと思いますよ」
 マクドナルドやKFCがスペイン式のコーヒーを出し続けていることを考えると、「モーニングカップのコーヒーをがぶ飲み」というのは、スペイン人の好みには合わないのだろう。小さな町の事情は知らないが、現在のスペインなら、カフェで「カフェ・アメリカーノ」と言えば、お湯割りを作ってくれる。メニューにないから、「裏メニュー」だ。スペインで堂々とメニューに ”American Coffee” と掲げているのは、スターバックスとコスタ・コーヒーのほか、どれだけあるのだろうか。
 スターバックス・スペインのホームページでメニューを見ると、アメリカでもやっているイタリア語名の商品と同時に、スペイン語名がついた商品もある。スターバックスの、フランスの事情とか、イギリスの事情、韓国の事情などを調べていたら数時間たってしまった。メニューがそれぞれの国によって、ちょっと違う。スターバックスは嫌いだが、「スターバックスの民族性」を調べると、じつに興味深い。手軽にできる卒論テーマかもしれない。