半袖の季節になって気がつくのは、腕時計をしていない人が多いということだ。スマホのせいで、腕時計が必要なくなったというのはわかるが、日本人は腕時計が大好きだったのではないか。
1970年代のことだが、旅先のある日、また時間を聞かれた。それで気がついた。日本人旅行者のほとんどは腕時計をしているが、欧米の旅行者では腕時計をしているのは、半数いるかどうかだ。1970年代だと、時計はまだ貴重品で、高性能でかつ安い時計となると日本製ということになるから、日本人旅行者の多くが腕時計をしているのだという想像はできる。1980年代に入ってからだが、成田空港の税関で私の隣りの列にいた男は、いかにもインド帰りという服装で、リシュケシュの普段着のままで成田に着いたという格好だから、この男の後ろに並ぶのは避けたのだ。大麻所持を疑われて、徹底的に調べられるだろうと予想したからで、案の定、バッグの中身を全部出し、ポケットに中身を全部出し、別室に行くように促された。その男の左手首の、大きなダイバーウォッチが、服装とどうにもバランスを欠いていた。
そういうことがあったから、日本人はなかなか腕時計は離さないと思っていたのに、最近の時計離れは著しい。それでいて、銀座に高級時計店が次々に進出しているという話を聞き、腕時計の世界も、「従来のまま時計を腕につけている者」と、「腕時計にまったく興味のない者」と、「腕時計を成金の象徴として自慢したがる芸能人やスポーツ選手やヤクザたち」と、「腕時計マニア」の四分割しているように思う。従来のまま腕時計をしているのは、中高年の男に多い。
腕時計不遇の時代を迎えて、今売れている時計ってどういうもので、どのくらいの価格が売れ筋商品なのだろうかと興味が湧き出して、検索してみると、価格.comの腕時計のページが出てきた。「売れ筋ランキング」の欄を見ると、こうなっていた。
1, G-SHOCK G-STEEL GST-W300-1AJF ・・・・・・・ 26,460円
2, ロレックス エクスプローラー214270・・・・・・・ 660,000円
3, ロレックス サブマリーナデイト116610LN ・・・・・ 948,000円
4, ロレックス コスモグラフ デイトナ116500LN ・・ 1,860,000円
5, ロレックス GMTマスター2116710BLNR・・・・・ 1,035,000円
これが、今の日本の腕時計売れ筋ランキングだと、誰が信じる？ 「日本の腕時計売り上げトップ５」かい？ 価格.comはあまり信用できないということは薄々感づいていたが、カメラなど今まで見たことがある商品の「売れ筋ランキング」はこれほど不自然ではなかった。私は素直ではないので、ランキングを見て購入を決めるということはないのだが、売れている商品の流れが知りたいと思って見たことはある。
ヤフーも価格.comも信用してはいけないのは明らかで、アマゾンは「おすすめ順」と明記している。「おすすめ」理由が広告費のタカによるものであったとしても、「売れ筋ランキング」のようにウソはついていない。
