1205話 プラハ 風がハープを奏でるように 第14回

此頃都ニハヤル物 その6

 

 プラハでよく見かけるもの、第5位は、これ。

5、すし

 1995年から96年にプラハで生活した日本人は、チェコ人にとっての魚をこう書いている。

 「内陸国チェコの人たちは、昔から海の幸にはなじみがないため、魚介類を見るとき、まるでエイリアンでも観察するかのような、恐怖まじりの怪訝な目つきをします。魚といえば、焼いた川魚を食べる程度。生で食べるなんて想像外です」(『プラハの春は鯉の味』北川幸子、日本貿易振興会、1997)

 チェコ人にとって魚料理とは、クリスマスに食べる鯉くらいのものだった。著者がプラハに住んでいた1996年当時、日本料理店は3店あったというが、その後すし事情は大きく変わった。チェコ人が海の魚を生で食べるようになったのだ。

 チェコのすしは、ふたつの意味で意外だった。プラハの郊外を散歩していて一戸建ての中国料理店、その見かけからすれば日本の「ラーメン屋」という感じなのだが、店頭に張り出した料理写真を見ていたら、右半分がすしだった。その店から数十メートルいったところにベトナム料理店があり、そこでもメニューの半分がすしだった。すしを食べさせる店が多くあったことに驚き、それが中国料理店やベトナム料理店のメニューに組み込まれ散るという点でも驚いた。ピザ屋とケバブ屋は兼業することも少なくないが、アジア料理店がすしも出している例が数多い。

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 近所に中国料理店を見つけ・・、

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 料理写真を見ていると・・・、

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 料理の半分はすしだとわかった。

 プラハ散歩を続けていると、スーパーマーケットにもすし弁当があることに驚いた。そのスーパーが入っているショッピングセンター全館探検をして、もっと驚いた。すしが3店舗で扱っているのだ。1階の通路に店を開いているのが、”sushi time”というすし弁当屋。キュウリやカニカマの海苔巻きにサーモンやマグロの握りが詰め合わせてあって、一人前くらいの量がある。これで150コルナくらいだから、日本円で750円。食堂で割合高い料理が食べられる金額だ。

 ショッピングセンターの2階に上がると、”running sushi”という回転ずしチェーン店があった。チェコ語と英語のチラシがあるので、料金を確認する。基本的には食べ放題で、月~木の11時から17時まで338コルナ、17時から22時までは418コルナ。金~日は昼は368コルナ、夜は 438コルナ。食べ放題のほか、丼物など1品料理もある。私の観察では、プラハ市民の外食は最低クラスで100コルナ(500円)程度なので、4倍だからこれは高い。飲み物代も加わるから、支払い総額はもっと高くなる。回転している料理を見てみると、意外にすしは少なく、煮物など日本の居酒屋メニューのほかケーキ類も多い。客がけっこういるが、チェコ人がどれだけいるかわからない。

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 ショッピングセンターの通路にすしの売店を見つけて、階下に行く。

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 弁当とすしだ。ちょっと高い。

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 再び上の階に行くと、回転すしの店があった。

 回転ずし店を見た後、フードコートになっている店内の食堂をチェックしていたらタイ料理店があり、料理人の会話に耳を澄ますとタイ語だ。タイ人が料理していることがわかる。日本で「ガパオライス」という名で知名度が上がっている「カーオ・パット・バイカプラオ」もあるが、高い。基本的に、私はタイ国外でタイ料理は食べないことにしている。高くて、まずい可能性があるからだが、それでも一応この店のメニューを左上から点検していたら、右側がすしだった。ああ、アジア料理店にはすしがつきものらしい。

 私は食文化研究者としてはまだまだ素人だとつくづく思うのは、プラハのすしを試食していないことだ。高くてまずいに違いないと思い、食指が動かなかったのだ。しかし、一度は食べてみる好奇心が必要だったと反省している。はたして酢飯にしているのか、酢は臭くないか、砂糖がたっぷり入っていないかなど、チェックしないといけないことが多いのに、研究心よりも食欲が勝ち、食べたいものを食べてしまった。食べたくもないものを無理して食べるようにならないと、立派な食文化研究者にはなれないのだ。

 日本人が握っているすし屋もあるだろうが、海のないチェコでうまいすしを食べようとしたら、とんでもない金額になることだろう。ベトナム料理店やタイ料理店にすしはあるが、注文があれば料理人が巻いたり握ったりするのかも、確かめていない。卸業者から仕入れているのだろうか。ただし、フードコートのベトナム料理&すしの店では、厨房の半分ですしを作っている光景は見ている。

 プラハで見かけるもの第6位はカジノだが、関心も資料もないので、書きたいことはほとんどない。007シリーズの「カジノロワイヤル」でモンテネグロのカジノということになっているのが、チェコの西端カルロビ・バリだというくらいの情報しかない。

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 上の写真とは別のスーパーですしを見つける。約1000円は高い。

 

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 また別のスーパーで弁当とおにぎりを見つける。49コルナは250円か。弁当の方が得だろうなと思いつつ、棚の下を見ると・・・、

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 サラダやすしがあった。このスーパーのすしとおにぎりの値段があまり変わらないことに日本人は「なんだかな・・」と思うものの、結局買わないでチェコ料理店に行った。

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 ショッピングセンターのなかにもカジノがある。ラスベガスでも、カジノといえば、なぜかエジプトなんだよなあ。