マルタ・クビショバーとチェコの音楽と政治と その8
チェコの過去のヒット曲はどういうタイプの音楽なのか、歌手の服装などいろいろ知りたかった。希望のままに終わるかと思われたが、偶然にも、宿の台所でテレビを見ていたら、コンサートのシーンが出てきた。日本風に言えば、「我らの青春! 懐かしの大歌謡祭」であり、スタジオ収録の番組だ。
腰を据えて、じっくりと見る。日記帳を広げてメモを取る。どうやら、番組スポンサーはレコード会社のようで、CDやDVDの広告が画面にずっと出ている。だから、いま歌っている歌手の名も画面に出続けるから、メモをとるのは便利なのだが、「メモをして、どうする?」という疑問もある。そういえば、イタリアにもこの手の番組があったことを思い出す。団塊の世代向けの音楽番組ということだろう。「青春歌謡!! 懐かしのヒットパレード」というようなタイトルがつきそうな番組だ。
スタジオの客席を見れば、50代もいるが多くは60代以上で、彼女ら彼らの青春時代といえば、1960~70年代だろう。その時代の音楽だと言うことが、観客と同世代の私にはよくわかる。イタリア語交じりの歌があった。曲調はカンツォーネだ。いかにも60年代だ。アメリカの歌の焼き直しもある。チョコスロバキアにも、当時の音楽の潮流が流れ込んでいたことがよくわかる。
チェコらしいといえるのは、トランペットやチューバなどの小編成ブラスバンドか、そのブラスバンドにアコーディオンが加わる編成、アコーディオンとバンドネオンの伴奏で歌うコーラスグループ。全体的には、日本で言えば、松崎しげる、布施明、サーカスといった感じの歌だ。ちなみにポルカはチェコの音楽なのだが、残念ながら私の好みではない。
https://www.youtube.com/watch?v=5JGgy-FXjf8
以下、そのテレビ画像の、民族服を着た人たちの写真を紹介する。
見始めたのが9時過ぎだから、10時には終わるだろう。コーヒーを飲みながらメモを取り、「つまらない音楽だなあ」と思いつつ見ていたが、11時になっても番組は終わらない。11時20分になって、私の堪忍袋が切れて、ベッドに向かった。この手の音楽を私の記憶で表現すれば、かつてあった「世界歌謡祭」や、いまもある「ユーロビジョン・ソング・コンテスト」の歌のようだ。
チェコ音楽をキーワードにネット遊びをしていたら、Best Czech Songsの画像が出てきた。プラハのような都会の若者が好んだ音楽で、当時の中高年は眉をひそめた歌も多かっただろうが、当時のポップミュージックの傾向はわかる。まずは、1960年代編を。1960年代のチェコは、自由化への道を歩み始めた時期だ。
https://www.youtube.com/watch?v=qo2T_Cc6GQo
ついでに、その70年代版も。
https://www.youtube.com/watch?v=QqmirdDRhU4
1980年版が、これ。ある国のポップミュージックの数十年の歴史を追っていくのは実に興味深い。チェコの場合、カレル・ゴットが長年にわたって音楽界のトップを走ってきたことがよくわかる。1939年生まれ、62年にレコードデビュー。チェコ国内だけでなくドイツ語圏で絶大な人気を誇る大歌手だと、この文章を書いている今、ネット情報で知った。
https://www.youtube.com/watch?v=lbIfEmDcGVQ
翌日の夜も、テレビでこのナツメロ番組をやっていた。野外の小さなコンサート収録。観客たちのトイレが心配になるほどの長時間番組だった。毎晩やっているのか?
チェコのポピュラー音楽を聞きたければユーチューブで聞くことはできるが、説明付きで詳しく聞きたいという人は、”Musical trip to Czech”というコンピレーション・アルバムがある。もちろん、見つけてすぐに買った。いろいろなタイプの音楽を集めてあるから、おもしろくって、ためになる。
北中正和さんがこういうアルバムを作っていたとは知らなかった。このCDのなかで気に入った歌手がいれば、ユーチューブで確認して、輸入CDを探せばいい。
2018年は、モロッコ、スペイン、大阪、チェコに行ったが、大みそかの今となってはなんだか遠い昔のように感じている。
チェコ音楽の話は今回で終わり、同時に今年の更新も最後になりました。次回からの分もすでに書いてありますが、更新は正月休みを終えてからにしましょう。私がチェコにいる間に出版されたので買いそびれていた『歩くはやさで旅したい』(おおうちそのよ、旅行人、2018)を年末に入手したので、正月はこの本を読みながら、2019年の旅を考えましょう。
今年も健康で旅ができたことに感謝しつつ、皆さまも、楽しい旅を。