1085話 イタリアの散歩者 第41話

 ナポリは危険か 後編


 前回書いたようなことを日記に書いた。帰国して、イタリアは本当に危ないか。ナポリがどのくらいひどい街か、ちょっと調べてみたくなった。
 インターネットで資料を探すと、在ローマの日本大使館が集めた資料に、イタリアの治安事情を紹介している記事があった。出典は、2011年の「イル・ジョルナーレ」紙。
 http://www.milano.it.emb-japan.go.jp/sicurezza/2012/2012_07.html
 この順位を見て、おいおいと思った。
 2011年の被害届ベースの犯罪発生件数 *印は北部都市
1位 ミラノ*
2位 ローマ
3位 トリノ
4位 ナポリ
5位 バーリ
6位 ボローニャ
7位 ブレシア
8位 フィレンツェ
9位 ジェノバ
10位 カターニャ

 人口が多い大都市では、犯罪も多いだろう。だから、こういう資料も見たのだが・・
 人口10万人当たりの犯罪発生率
1位 ミラノ*
2位 リミニ*
3位 ボローニャ
4位 トリノ
5位 ローマ
6位 ジェノバ
7位 プラト
8位 ラベンナ*
9位 フィレンツェ
10位 インペリア*
 ミラノの場合、2011年の資料だが、前年比で窃盗は21%増、スリは5.4%増だ。
ミラノの人口は135万人で、外国人の正規滞在者は20万人、不法滞在者は2.5万人で、外国人による窃盗や強盗が増加していると、日本大使館の資料では説明している。北イタリアは工業地帯で、不況になれば、失業した労働者が多くなり、治安が悪くなるという事らしい。リミニはアドリア海に面したリゾート地だが、それと犯罪発生率と関係があるのか。
 上のリストに、ナポリがない。私の印象では、悪名高きナポリの治安は、「濡れ衣」かもしれない。故なき非難ではないが、イタリアで最悪というわけではない。
別の資料もある。これは犯罪発生件数だけでなく、不安感などの感情も考慮したランキングだというが、だからあまり信用できない。その資料が伝える「ヨーロッパで最も治安が悪い都市ランキング 2016年版」では、ワースト10はこうなっている。表記は原文のまま。
1,ロストフ・ナ・ドヌ(ロシア)、2,バーリ(イタリア)、3,トリノ(イタリア)、4,ナポリ(イタリア)、5,マルセイユ(フランス)、6,リール(フランス)、7,コヴェントリー(イギリス)、8,ロッテルダム(オランダ)、9,グラスゴースコットランド)、10,サラエヴォボスニア・ヘルツェゴビナ
 https://www.madameriri.com/2016/06/14/most-dangerous-cities-in-europe2016/
 イタリアに限らず、ある国や都市の治安はどうかという問題は、知っている街でも答えるのは難しい。一般的に「治安がいい」と言われる東京でも、スリも強盗や殺人事件もある。内乱や内戦状態になっているのでもなければ、個人的な体験でも、統計資料でも、よくわからないものだ。上の「ヨーロッパで最も治安が悪い都市ランキング」のようなものは、客観性に乏しいのだ。
 「ニューヨークは危険な街だ」と、私がニューヨークで生まれ育った男に言うと、「よそ者はニューヨークのことを知りもしないくせに、そういうデタラメを言う」とちょっと怒って言った。「オレは、生まれてから一度も『危ない』と思ったことはないよ」。ニューヨークで、彼はそう言った。
 それから2年後に再会したら、開口一番「やられたよ。会社の地下駐車場でホールドアップだ」。自分が犯罪に合うかどうかは、0か100か、だ。


 ミラノ中央駅前広場の木立に近づいたら・・・


 タイサンボク(マグノリアの仲間)だ。この木に初めて会ったのは、リスボンのアマリア・ロドリゲス邸。その次が、ポルトガルの北部都市のポルト駅前の並木だった。何かの意味がある植物なのだろうか。