1091話 イタリアの散歩者 第47話

 トリノにて 〜自動車観察

 自動車博物館に行った帰り道、イタリアと自動車というテーマを考えた。
 イタリアの街を歩いていると、当然イタリア車が多く走っているとわかる。これは想像通りだが、その数は想像以上だ。「日本では日本車ばかり走っている」というほどの寡占化ではないが、やはりイタリア車が多い。
 イタリアだからと言って、フェラーリマセラティランボルギーニが、東京のレクサスのように走っているとは思っていない。まあ、フィアットアルファロメオが主流だろうなと思っていて、確かにそうだ。イタリアのあまり広くない道路には、フィアットがよく似合う。とはいえ、ローマやミラノのような大都市に出れば、フィアットにもでかい車があることも知った。
 路上の観察では、メルセデスはよく見るが、BMWはあまり見ないとか、フォルクスワーゲンをもっと見るかと思ったが、あまり見ないといったことが印象に残ったが、こんな印象などはあてにならない。きっちりと資料で確認してみたい。
 やはり、資料でちゃんと確認しておくものだ。イタリアの新車登録の資料(2016年)では、イタリア車の割合は約30%しかない。外国車が70%ということだ。イタリア車の中で、フィアットが21%で、やはり圧倒的な市場占有率だ。フォルクスワーゲンは7.6%で2位、ランチアアルファロメオなどの倍の占有率だ。3位以下は、ルノー、フォード、プジョーオペルなどが続く。モデル別の新車登録数のベスト5は、フィアット・パンダが1位で、以下ランチアイプシロンルノー・クリオ、フィアット500、フィアット500Xの順になる。
 もっともよく見かけたという印象に残っているのは、フィアット500(チンクエチェント)のシリーズとパンダだろう。パンダのテレビCMはよく見た。「今買えば、85万ユーロ」というCMはよく覚えている。よく知らないが、それは安いと思った。日本円にすれば115万円だ。単純比較はできないが、帰国後に日本での売値を調べたら、車種は違うだろうがこの倍近い。
 スマートと、それにそっくりの類似車の存在も印象的だった。2席車がこれほど多いというのは、バイクからの乗り換えだろうかと思った。テレビCMで、スマートの直線駐車をやっていた。道路に縦列駐車の車が並ぶなか、歩道に対して直線に、頭から駐車するのである。これを現実にやっているのも見た。それで、小さな車に注目して街を歩くと、古い車に、日本の550cc時代の軽自動車くらいの大きさの車があったこともわかった。マスコミでは、「日本独特の軽自動車」という表現をよく耳にするが、日本の軽自動車枠という規制は当然、日本独特だが、軽自動車と同じようなサイズの車は外国にもある。ローマやミラノなどの大都市では大きな車を見る機会が多いが、パレルモのように、ローマやミラノから見れば辺境の小都市では、20年以上前の小さな車などいくらでも走っている。


 こういう小さな車は、今のヨーロッパにはもうないと思っていたが、あるんですねえ。ただし、最新ではないだろう。シチリアパレルモの裏通り。

 ローマでも地下鉄終点遊びをやった。どの街でも、終点まで行って、その景色を見たいという欲望があって、タイミングが合えば実行する。ローマの地下鉄A線の終点Aragninaアラニーナ駅に行ってみた。郊外の住宅地を想像していたが、駅前の風景は、路上市場とバス停と、巨大な駐車場ビルだった。なぜか、駅から歩いて行けるような地域に住宅はない。周辺は、荒地だ。もしかすると、新都市計画はあるが、種々の問題があって荒地のままになっているのだろうか。高速道路が駅と住宅地を分断している。だから、新興住宅地に住んでいる者は、駅まで車で出来て、地下鉄に乗り換えるのだろうが、それにしても駐車場ビルはでかい。それだけ、公共交通機関が発達していないという証明だろうか。そこがどういう場所かは、たった今グーグルマップを見たらよくわかった。実際に見るよりもよくわかるのがくやしい。

 イタリアなら、ハノイのように色鮮やかなベスパが走り回っているだろうと思ったが、そんなことはなかった。二輪車は多いが、ほとんどは中型のスクーターで黒が多い。大型オートバイが走っているのを見たのは、全部で4台。ハーレーなどの大型バイクを、やはり初老の男が乗っていた。


 この2枚ともミラノ駅前広場の一角。ベトナムのように、かわいいベスパが走っているかと思ったが、実用一点張りのスクーターがほとんどだった。流行色は黒か?