1101話 イタリアの散歩者 第57話

 イタリア映画 その3

 いままで旅先でやっていたように、映画館でおもしろそうな映画を見つけたら、とりあえず見てみる。そういう事を繰り返していて、かなりの確率で名作に出会っているのだが、ローマでは散歩の途中で映画館に出会うという幸運に恵まれなかったので、DVDを買おうかと考えた。マドリッドのように、中古DVDをたたき売る店があれば、適当に選んで買って見ようかと思ったのだが、そういった店が見つからない。新品のCDやDVD店も見つからない。DVDを売っていた唯一の店はタバッキ(タバコも売る雑貨店)で、テレビドラマらしき作品をビニール袋に入れて天井からぶら下げている。これが5枚ほど、それだけだ。
 じつは見たいDVDがあった。映画ではないが、ドキュメントでもない。ユーチューブでイタリア食文化の動画を検索しているときに見つけたのだが、映画のなかでスパゲティを食べているシーンを集めたものがあった。それと同じものを、ローマの食堂のテレビで見たのだ。例えば、こういう動画だ。
 https://www.youtube.com/watch?v=MVNmjf4-bS0
 https://www.youtube.com/watch?v=MkpEqtJY4QI
 ピザもある。
 https://www.youtube.com/watch?v=OGb0Nbb9NSY
 外国ではこういう本が出ていて、私は日本の書店で内容も確認している。
 https://www.amazon.co.jp/Spaghetti-Stars-Vincenzo-Mollica/dp/8890130415/ref=sr_1_31?s=english-books&ie=UTF8&qid=1515457598&sr=1-31&keywords=spaghetti
 イタリアで映画のDVDが手に入らないのならば、日本で買うしかない。行きがかり上、「気分はイタリア」になっているこの今、ちょっとお付き合いしてみようと思った。それで買ったのが、「シチリア! シチリア!」だ。
 「ニュー・シネマ・パラダイス」(1989)、「海の上のピアニスト」(1999)に続き、監督ジュゼッペ・トルナトーレが音楽のエンニオ・モリコーネと組んだ2010年の作品。前2作は見ているので、安心して見た。これはシチリア出身の監督のシチリア讃歌だ。原題の”Baaria”はパレルモ県内第2の都市で、通常は標準語でバゲーリア”Bagheria”だが、地元の方言ではBaariaだ。監督が生まれ育った街を、自分たちの言葉で表記する。それだけでも、シチリア讃歌という映画の柱はよくわかる。
 この映画は有名だから、私がここであえて書くこともないのだが、「あれ?」と思ったのは、見たことがない映画なのに、スパゲティ大食い大会のシーンは見た記憶がある。多分、パソコンでスパゲティ関連の画像を探していて、上に書いたような、「映画のスパゲティ」というような動画に、この映画の1シーンが入っていたのだろう。
1930年代から70年代までのシチリアを描いていて、街を映した時に、道路を走る車で時代の変化がわかる構成になっているので、自動車ファンも楽しめる。「ニュー・シネマ・パラダイス」のように、イタリア映画讃歌のシーンもある。イタリア現代史もわかる。このように、いくつもの楽しみ方ができる映画だ。
 https://www.youtube.com/watch?v=iXfivQMXGHk

 チネチッタのオープンセット。ここで「テルマエ・ロマエ」を撮ったらしい。柱など石のように見えて、たたくと「ポカン、ポカン」という音がする金属板に彩色したものだ。