1136話 ダウンジャケット寒中旅行記 第20話

 いつものように映画三昧 後編
 今回の旅行で利用したのは、アラブ首長国連邦アブダビを本拠地にするエティハド航空だった。食事は中国系航空会社並みだったが、映画は充分に楽しんだ。おかげで、往路も復路も、ほとんど寝ていない。日本映画はリストにない。それが、現在の「日本と日本人旅行者」の実力である。日本人旅行者のことなど考えなくても商売は成り立つという時代である。安い飛行機に乗っていながら、「日本映画の上映がない」とか「日本語字幕がない」とネットに不満を書いている人がいるが、機内で日本語エンターテインメントをたっぷり楽しみたかったら、高いカネを払ってJALANAを利用すればいいのだ。そんなことを考えているうちに、「安い便の食事に文句を言うのはやめよう」と思った。うまい飯を買ってから乗ればいいだけだ。
 エティハド機は新しく、モニターが大きく、前回のスペイン旅行で使った中国機とは違って、どの機械も問題なく作動したので(アジア雑語林第881話参照)、機内でインド映画を飛ばしながら何本か見た。フィリピン映画は、タイトルを忘れたのだが、こういう映画だった。スリで生計を立てている若者とアメリカからやって来たフィリピン人養子の青春コメディー。異文化モノおしてはちょっとおもしろかった。この映画のことはネットで調べたが、情報が見つからなかった。
 久しぶりに、007シリーズを何本か見た。アメリカ映画は「RED」(2010)を見た。事前情報はまったくない。主演のブルース・ウィルスは元CIA職員。モーガン・フリーマンジョン・マルコビッチも出ているなあと思って見ているうちに、CIAの資料係が、「まさか! おお!!」という役者で感激。もうスクリーン上で会うとは思っていなかった伝説の俳優、アーネスト・ボーグナインだ。この映画が2010年制作で、2012年に亡くなっているということは知らずに見ていたからだ。そのほか、「おお、女王が機関銃を手に・・・」などと、豪華出演者に驚きながら見た。アクション映画は好きではないが、言葉が不自由な者にはわかりやすい。
https://www.youtube.com/watch?v=-gqMKTkxBqY
 「ブレイドランナー2049」は、途中で離陸体制に入って中段。最後まで見ていないが、あまり好みではないので、残念ではない。こうして次々に映画を見て、疲れたらドキュメントを見て、目が疲れたらジャズやアフリカ音楽を聞きながら食事をした。寝ているヒマなんかない。
 韓国映画は、昨年のイタリア旅行の時は機内設備不良で見ることができなかった「華麗なるリベンジ」(ファン・ジョンミン、カン・ドンウォン)を今回見た。イ・ソンミンほか、曲者俳優多数出演。
https://www.youtube.com/watch?v=GiBRIQ-7meM
 「エターナル」(イ・ビョンホン)も見た。イ・ビョンホンの映画は、不気味な雰囲気の作品が多いのだが、これもそういう映画だ。やはり、私の好みではない。
https://www.youtube.com/watch?v=GiBRIQ-7meM
 幸運にも、期待していた映画が機内で出会えた。「タクシー運転手」だ。「ソン・ガンホ主演なら間違いなし」という期待どおり、すばらしい作品で、もしかすると2018年のベストになるかもしれない。
 この映画は、帰国後だいぶたってから、「タクシー運転手〜約束は海を越えて〜」というタイトルで日本公開され、情報も数多いので、内容の解説はしない。韓国もタイも中国も、軍隊は自国民を制圧するために存在しているのだとわかる。
http://klockworx-asia.com/taxi-driver/