1151話 桜3月大阪散歩2018 第5回

 ある1日、大正区の散歩から その2

 今宮駅周辺は大型スーパーなどがあり、新今宮駅周辺とはまったく違う雰囲気だ。新今宮駅環状線と分かれるJR関西本線難波駅に伸びる。この路線はまったく気にしていなかったのだが、芦原橋駅を過ぎて環状線と交差する南海高野線は気になった。だが、「これは後で、じっくり見よう」と思っていて、ついついそのままになってしまった。南海線の終点が600メートルほど北にある汐見駅だ。大都会の田舎風終着駅だということは知っていたので、現物を見に行こうと思っていたのだが、行きそびれた。大阪市内では、多分、日陰の有名駅だ。
http://www.mekurutabi.com/station/shiomibashi.html
 今宮駅周辺からは環状線に沿っては歩けなくなるので、やや西に向かい木津川に近寄って歩く。環状線の内側(進行方向右側)は新しい高層住宅が見えるが、外側は町工場や倉庫や狭小住宅が建っている。のちにグーグルで空撮映像を見ると、このあたりに空き地が多いことがわかる。行政が区画整理をしようとしているのだろうか。
南海線の踏切を渡り工場と倉庫の地区を抜けて左に折れて木津川に向かう。線路沿いに歩くと川を渡れないので、左折して大浪橋を渡っていると、右手に環状線木津川橋梁の特異な姿が見えた。『大阪建築 みる・あるく・かたる』(倉方俊輔・柴崎友香阪神エルマガジン社、2014)を読んで気になった鉄橋だ。とてもプロが造ったとは思えない不格好な鉄橋だが、専門的にはダブルワーレントラス方式というちゃんとした橋ではある。環状線では、大正駅を超えてすぐにある岩崎運河に架かる同じ形の橋と共に、鉄道ファンの間では有名らしい。1928年の完成だ。

 素人の目には無駄に背が高く、やはり不格好だと思うが、それもまた個性。大阪は、川巡り&橋巡りを楽しむには絶好の街だ。いつか、橋巡りもやってみたい。

 鉄橋をくぐって、北に向かう。

 木津川にそって北上し、鉄橋を近くで眺め、線路の下をくぐってさらに北に上がる。川沿いに建っている大きな建物に、大阪動植物海洋専門学校という看板が見えた。水族館職員養成学校なのかと想像したが、「植物」というのがわからない。調べてみれば、こういう変遷がある学校だった。
1988年 大阪生物工学専門学校として開校。
1996年 日本海洋科学専門学校に改称。
2006年 大阪アニマル&オーシャン専門学校に改称。
2008年 大阪動植物海洋専門学校に改称。
水族館以外にも、動物園や植物園、ペットショップへの就職を目指す若者を受け入れているらしい。なるほど。
 さらに木津川に沿って歩くと、大通りに出る。そこに架かっているのが大正橋だ。大正区は大正時代にできた区だと思いがちだが、実は大正区の名称は、大正4(1917)年にできたこの大正橋に由来する。大正区の制定は昭和7年(1932年)だが、その時の区名候補に「大正橋区」があったが、長いので「大正区」となったという歴史があるからちょっとややこしい。ちなみに、昭和区名古屋市にある。明治区、平成区はない。
 木津川と交差する尻無川の向こうは西区。ガスタンクが見えて、その背後に巨大な屋根が見える。京セラドーム大阪。そういえば、ここがまだ大阪シティードームという名前だったときに、このあたりを歩いているのだが、何の目的で歩いたのか覚えていない。球場を見に来たわけはないから、難波方面から散歩をしていて、ここに出たのだろうか。
 それにしても、ドーム球場の脇に巨大なガスタンクが3基あるというのは異様な景色ではある。当然、安全性は考えているのだろうが、5万5000人収容可能の施設のすぐそばにガスタンクがあるのは気になる。大阪人には常識だろうが、調べてみれば、かつて大阪ガスの工場があったこの場所に、このドーム球場を作ったという歴史があるとわかった。
 大正区の最北端にあるのは、環状線大正駅。ここから南下して、大正区散歩を始める。


 中央にドーム球場、左手にガスタンク。右手の橋桁が1本というのも特異だ。普通は橋の両側にあるのだが。

 住宅地に入ってふと振り向くと、路地の向こうにドーム球場が見えた。