1163話 桜3月大阪散歩2018 第17回


 国立民族学博物館 後編


 話は民博訪問2日目の朝に戻る。
 特別展会場で講演会があるというので行ってみると、旧知の野林厚志さんがいた。民博の教授で、この特別展の実行委員長だ。廊下ですれ違うことはあるかと思っていたが、講演者として会うとは思ってもいなかった。
「おや、前川さん!」
「あっ、おはようございます」
 この朝講演をやる教授に急用ができて、野林さんが代役を務めることになったという事情を説明してくれた。特別展は、きのうすでに見ているのだが、野林さんの解説付きで、EEMが集めた民族資料をもう一度見た。まるでVIP待遇のようなぜいたくだ。
http://www.minpaku.ac.jp/museum/exhibition/special/20180308taiyou/index
 会場で別れ際、200ページほどの展示品カラーカタログをいただいた。じつは、きのう買おうかと思ったのだが、資料はまとめて買う心づもりだったので、買わなかった。そんなわけで、館内の書店で本格的な買い物をすることにした。文化人類学関連書と民博関係者の著書が多くある。昔はなかった民族音楽などのCDが今はある。時間無制限で本を点検し、そのあとはまたビデオライブラリーにこもった。

 世界のインスタントラーメンの展示があり、

 世界の祭りの展示もある。
 ビデオ、特に食文化関連の映像資料を見ながら考えていたのは、このまま閉館時刻までいるか、それともすぐ近所の’70パビリオンで開催中の70年万博関連の展示会を見た後、門真市パナソニックミュージアムに行こうかということだ。
https://www.panasonic.com/jp/corporate/history/panasonic-museum.html
 産業博物館にちょっと興味があったのだが、同時に大阪モノレールに乗りたいという希望もあった。万博を早めに切り上げて、大阪モノレール万博記念公園駅に向かった。そこから門真市までモノレール、京阪本線に乗り換えてひと駅、西三荘で降りて駅前がパナソニックの工場街で、その一角に博物館がある。
 大阪に行く直前に、パナソニックミュージアムができたというニュースは見たので、気になって出かけたのだが、ああ、ここは博物館ではない。松下幸之助廟とナショナル製品倉庫である。松下を讃える廟は、その信者たちにとっては聖地かもしれないが、私には見るべきものはほとんどない。自称ミュージアムは、いくつかのナショナル製品がただ置いてあるだけの倉庫で、あの、世界的家電メーカーの、「松下電器の製品」展示にしては何とも貧相だ。トヨタ博物館並みのものを求めるのは無理でも、これではあまりにみすぼらしい。5分で見終わって、4時。民博は5時閉館だから、今から戻っても間に合わない。ああ、こんなところに来ないで、あのまま民博にいればよかったと後悔したが、わざわざこんな地区に来たのだからと駅周辺をちょっと散歩したのだが、おもしろいものはなかった。
 さて、これからどこに行こう。西三荘駅の路線図を見た。京阪本線だから当然、大阪とは逆の方向に行けば、京都だ。駅員に聞いたら、出町柳まで1時間ほどかかるという。近いとも遠いとも言えない微妙な時間だ。淀屋橋に向かう京阪本線に乗りながら、「そうだ 京都 行こう」は自分の心にあるのか点検してみたら、「なし!」という結論に達した。明日京都に行くなら、JR新快速で30分ほどで大阪から京都に着くのだが、京都に何の魅力も感じない。神社仏閣・土産物屋・おしゃれなカフェに興味がないのだ。京都に行っても、したいことがない。大阪散歩の楽しさを思い浮かべると、京都が色あせる。
 このまま大阪に居ようと決めた。大阪がいい。「さて、今日はどこに行こう」と考えている大阪の日々は、ワクワクする毎日だ。
民博でかなりの本を買い、古本屋でも買った結果、帰りの関空LCC機の荷物超過料金を徴収されることになってしまった。安く買った航空運賃は、この金額を加えても往復の新幹線料金よりも安かったが、本は宅配便で送ればよかった。失敗。LCCが荷物料金で儲けているのは、インク代で稼いでいるプリンターメーカーと同じだな。
注 6月18日の大阪地震のため運休していた大阪モノレールは29日から平常運転に戻ったが、民博は現在休館していて、9月に一部で展示再開し、完全再開は10月中旬を予定している。訪問を考えている人は、民博のHPで確認のこと。
http://www.minpaku.ac.jp/


 インドネシア仮面劇の面。