1171話 桜3月大阪散歩2018 第25回(最終回)


 大阪スケッチ その2


 大阪スケッチの2回目は、おもに建築物をめぐる話を紹介してみよう。


 このブログですでに何度か言及したが、このような木造3階建て、1階駐車場という住宅は全国にあるが、大阪に特に多いような気がする。想像するに、写真の土地はもとは長屋で、そこにこういう建て売りを建てたのではないだろうか。狭小3階建ては、車庫部分の強度に難点がある。


 このビルはマンションとして設計したのだが、建設途中でホテルに変更したのではないかと想像している。ホテルなのにベランダがあるのは、ハワイなどのリゾート地のもので、街なかのホテルらしくない。想像をさらに膨らますと、外国人観光客が急増する昨今の事情を眺めて、「ホテルのほうが儲かる」という経営判断があったのかもしれない。ちなみに、タイ最初の超高層ビル「バイヨークタワー」は、賃貸マンションとして誕生したが、ホテル不足の観光事情を利用して急遽ホテルに改装した。タイでは、入居者を追い出すのはじつに簡単だ。


 難波八阪神社。大阪人は「阪神」の文字が気になるかもしれないが、「なんばやさかじんじゃ」と読む。境内にある獅子舞台は、目が照明、鼻がスピーカーになっている。夜の獅子舞台を見たいと思って夜に行ったら、門が閉まっていた。通常は昼間だけ解放されているのだろうか。大阪の名物建築のひとつだ。


 松屋町筋は「まつやまちすじ」が正式名なのだが、話し言葉では「まっちゃまちすじ」という。その通りにある生國魂神社(いくくにたまじんじゃ)は、通称「いくたまさん」という。前回の大阪滞在でのことだ。夕刻にここを歩いていて、神社らしからぬ建造物が背後に見えて、難波八阪神社の例もあるので、境内に新奇な施設を作ったのかと思った。数日後、この神社の背後を歩いたら、この建造物はラブホテルだとわかった。大阪の性と俗、いや聖と俗か、まあ同じようなものだが、こういう世界を見たのだが写真に撮らなかった。というわけで、1年後に撮影した。

 大阪市西成区(左側)と阿倍野区(右側)の国境である。右の阿倍野区には高層マンション街があり、大阪市立大学医学部と附属病院があり、超高層ビルあべのハルカスに至る。左側の西成区に見えている木造家屋は、飛田新地、まだ現役の遊郭である。これほど興味深い国境は、大阪といえども他にないかもしれない。

 180度回って撮影。右側が飛田新地。こういう光景を見ることができるから、散歩がおもしろいのだ。

 季節が廻り、春から盛夏になった。桜咲く大阪の散歩話は今回で終える。この春、「街を歩こう」と思って、世界の街を思い浮かべたら、大阪がその候補地第一位になって、今年も出かけた。大阪は、散歩地としては特級におもしろい。数日遊ぶなら、候補になる街はいくらでも思い浮かぶが、ひと月いても毎日がおもしろいという街は、ニューヨークなどを除けばそう多くない。大阪という異文化に出会えたことは幸せだった。今は別の街のことを考えているが、いずれまた大阪に行く。まだ大阪市だって全区をめぐっていないのだから、大阪府全域に足を踏み入れるにはまだまだ時間がかかる。