1226話 プラハ 風がハープを奏でるように 35回

 建物を見に行く その6 生活者の気分

 

 プラハで最初に泊まった宿は8人部屋のドミトリーだったが、そのあと利用することになった郊外にある一戸建ての宿は個室だった。トイレやシャワーは共用だが、清潔に管理されていて不満はまったくない。廊下に小さな台所がついていて、カップや皿などもあるから、自炊する気ならある程度できる。洗濯するにはちょっと不便だが、洗面台で洗って、裏庭で干した。

 団地のなかを15分歩いて地下鉄駅に行く道は退屈ではあるが、携帯オーディオで音楽を聞きながらなら、それはそれで楽しい時間だった。

 部屋で朝食を済ませたら、通勤者のごとく駅まで歩き、プラハの中心部に出かける。そして、夕暮れ前に駅に着き、買い物をして帰宅する。買い物は夕食と翌朝の食材だ。調べてみれば、駅には大きなスーパーが2軒あり、宿のすぐ近くにもある。夕方、スーパーマーケットで買い物をして、愛用の買い物袋を手に帰路を歩いていると、旅行者ではなく、なんだか「通勤している生活者」という感じがしてくるのだ。別人になった気分は、悪くない。郊外生活は想像していたほどひどくはなかった。

 

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 地下鉄C線ブジョヨビツカー(BUDEJOVICKA)駅周辺。オフィスビルの向こうに団地が見える。ここが、私の最寄り駅。

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 駅前ショッピングセンターには、スーパーマーケットやフードコートもある。

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 スーパーのなかのパン売り場。日本と違って、菓子パンや調理パンはあまりない。

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 買い物を終えると、夕暮れ。勤労者の帰宅の雰囲気で、「我が家」に帰る。

 食べ物や飲み物の話は、あとでまとめて書く予定だが、ここでは予告編代わりに少し書いておくことにする。

 巨大スーパーでまず探したのは、インスタントコーヒーだ。第1の条件は小さいこと。大きなビンを持って旅行したくない。日本の100円ショップで売っているような、小さなビンに入ったインスタントコーヒーを探した。コーヒー・砂糖・粉ミルクが袋に入っている3in1というのは、持ち運びにはいいが、私は砂糖もミルクを入れないので、袋入りコーヒーは要らない。

 「おっ、いいのが見つかった」と、小さなビン入りコーヒーに手を伸ばした。ラベルの感じは、私が好きな「ネスカフェ・クラシック」にやや近い。”BON  AROMA“。ラベルを見ると、ポーランド製だとわかる。このコーヒーが気に入った。プラハでは3度買った。飲み残したら宿に寄贈し、次の宿でまた買った。

 日記を見るとレシートが貼ってあり、”BON  AROMA KAVA 100G  39.90”と打ち込んである。KAVAはコーヒーのことだ。100グラムビンで39.90コルナということは、約200円だ。帰国後、ネットでこのコーヒーを調べると、ローソンストアで100円とか、ドンキで180円とか、東京足立区のスーパーのチラシでは298円だったといった情報が見つかった。がぶ飲みするときは、薄めコーヒーが好きなので,味も香りもあまり追及しない。コーヒー通がバカにするような安コーヒーが好きなのだが、日本のコンビニ・コーヒーは色付きのお湯という感じで、私にはあまりに薄く、うまさはまったく感じない。小さめのカップに、ネスカフェ・クラシックをティースプーン山盛り1杯(モーニングカップなら、2杯半)入れた濃さが好きだ。

 朝食と夕食用にパンを各種買う。うまそうなパンはスーパーのパン売り場でいくつも売っているが、大きいのは買うのを断念する。日本では毎朝バナナを食べる習慣があるので、プラハでもバナナを買った。4本22Kは110円。レシートを読んで、チェコ語でバナナは”BANANY”だと知った。

 日本のスーパーにある「お惣菜」のようなものは少なく、せいぜいトリもも肉のローストくらいだから、私はサラダを買った。朝食用ではなく、夕食用だ。量り売りのサラダは外見と名前で想像して注文した。外見と名前の両方でわかったのは、”BROKOLICOVY”。ブロッコリーのサラダだ。ポテトサラダだろうと想像して買ったのが”SALAT  BRAMBOROVY 16.35K”。約80円だ。salatがサラダということは、想像がついた。そのあとの語の意味は食べてわかった。やはりジャガイモだ。帰国してから、辞書で調べて確認した。ただし、ジャガイモを意味するチェコ語は、使い方で変化していくから、brambovy、brambory、brambor、brambora、bramborach、brambproveなどと姿を変えていくから、勉強する気が失せるのだ。

 日本でもよく見かけるパスタやジャガイモをマヨネーズで和えたサラダは、200グラムで15~20K、つまり75~100円くらいだ。味は日本のマヨネーズを使ったサラダとほとんど変わらない。量はこれで充分だか、もっと野菜を食べたいのでトマト1個も加える。パン、サラダ、トマト、コーヒーの夕食で、合計30Kほど、約150円だ。節約するための夕食ではなく、自分の部屋で、ゆっくりテレビを見ながら、何杯かのコーヒーとともに野菜中心の食事をしたかっただけだ。駅近くのショッピングセンターのフードコートで食事をすれば、80~130Kくらいで充分すぎるほどの食事になる。400円から650円くらいだから、節約のために自炊していたわけではない。

 その飲み食いの話はいずれ、まとめて。

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広さは6畳くらいか。ひとりで過ごすには充分だ。

 

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 朝食後、地図を見たりして、その日の散歩の計画を立てる。

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 ある日の夕食。ポテトサラダがうまい。トマトも。

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 翌日も夕食もサラダ。今度はパスタサラダ。前日とは違うパンだとおわかりか。昼は肉を食べることが多いので、夕食はこれでいい。

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 干しブドウのパンとバナナ。テレビのニュースを見ながら、1時間ほどの朝食を楽しむ。

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 そして、また散歩の1日が始まる。この日は15キロほどの散歩になった。