1229話 プラハ 風がハープを奏でるように 38回

 建物を見に行く その9 キュビズム 後編

 

 キュビズム建築散歩は、散歩をする一応の名目のようなもので、深く研究するわけではない。ちょっとおもしろそうだったので、てくてくと歩いた。それだけのことなのだが、建築のおもしろい街は、散歩のおもしろい街でもある。

 

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The Svanda Theatre 1918~1920

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 Tychonova通りの住宅。1912~1913

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インターコンチネンタルホテル脇の教員住宅。1917~1919

 

 プラハキュビズム建築とされるものを訪ね歩いても、私にはキュビズム建築とは一体何かということがわからない。建築の参考書を読めば、「非ユークリッド幾何学の思想を建築で表現したもの」などと言っても、普通の幾何学とは違うものなのだろうが、私にはわからないし、深く勉強しようとも思わない。

 レジオン銀行は「在郷兵士銀行」だから、兵士のレリーフが壁面に飾られ(「兵士の帰還」というレリーフ)、なんだか社会主義国のようだが(このビルが建てられた時代は、チェコはまだ社会主義国ではない)、建物の中にはいると、おお、アール・デコだよと、デザインのド素人がカメラを取り出す。

 のちに参考書を読むと、チェコキュビズム建築というのは、結局のところチェコアール・デコなのだという解説(「芸術新潮」1999.11)を読んで、納得。このチェコアール・デコは「1925年以降、国際的なアール・デコに飲み込まれた」ことで、キュビズム建築も終わる。

 

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 地図を見ながら、The Czechoslovak Legions Bank(1922~1923)を探した。通りの向こうに見つけたが、このときはまだ何の期待もしていなかった。

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 大通りを渡ると、ゴタゴタしたレリーフがあり、悪い予感がした。

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 部外者も入れそうなので、ちょっと覗くことにする。

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 この木のドア、いいじゃないか。

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 右のドアも見る。このとき。「アール・デコ?」という印象だった。

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 木は美しいが、この柱の石は私好みではない。

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 脇の壁のドアにあるのは、部外者立ち入り禁止のマークだろう。私は直進する。

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 おお、これはなんだ。なかは近代的な銀行だ。もう少しシンプルな方が好みだが、いいぞ。しばし、立ち止まり眺める。細部も撮影したくなる。

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 ひとつ上の写真のように、脇からの覗き見的な撮影はおめこぼしをしてくれたが、今度は正面から堂々と銀行にカメラを向け撮影、同時に「ご遠慮ください」という声が耳に入る。ここのガラス張りの天井も細部も撮影したかった。中に入れてくれれば、1時間以上は遊べるのになあ・・・と思いつつこのビルを出る。

 ちなみに、この銀行はCSOB(Československá obchodní banka),チェコスロバキア貿易銀行である。