1240話 プラハ 風がハープを奏でるように 49回

 乗り物の話 その3 交通博物館

 

 チェコのガイドブックを読んでいて、もっとも行きたいと思ったのは交通博物館だった。私は鉄道マニアでも自動車マニアでもなく、「ちょっと乗り物が好き」という程度だから、三輪の自転車と自動車以外まともに調べたことはないし、専門雑誌を定期購読しているなどというマニアではまったくないのだが、古い乗り物を眺めているのは好きだ。

 プラハ交通博物館はトラムの駅から歩いてすぐだから交通の便はいいのだが、いつでも入場可能というわけではない。開館は土・日・祝日のみで、しかも11月から3月までの冬季は休館するので、入館できるのは年間60日くらいだろうか。入場料50コルナは安い。

 1993年のオープンで、全くの想像だが、プラハ交通局の退職者たちが運営に当たっているだろうと想像した。乗り物が大好きな人たちが、ていねいに保存管理をしていることがよくわかる。昔の車庫を利用した博物館なので、手狭。窮屈な感じはする。トラムもバスも、できるだけ多く展示したいという希望がこういうことになったのだろうが、それが悪いわけではない。”Brief  Guide to Prague Public Transport Museum”という16ページの..英語の小冊子も用意してある。

 この冊子から、プラハの公共交通機関黎明期の部分をちょっと紹介する。

 1875年9月23日、プラハに馬が車両を引く鉄道馬車が姿を見せた。間もなくして、路面電車が登場する。1891年のことだ。全線が電化するのは1905年だった。

 というわけで、この博物館には鉄道馬車や初期の電車も展示してあるものの、「おうおう、昔の電車だ」とあまり感動しないのは、うれしいことに古い車両も現役で運行しているからだ。休日には飛び切り古い車両を特別運賃で運行しているが、それほど古くはなければ日常的によく見かける。具体的に言えば、第2次大戦以前や、ひとつ目ライトのタトラT1(1952~58年製造)やT2(1955~62年製造)を路上で見た記憶はないが、1960年から89年まで製造したふたつ目ライトのタトラT3なら、よく見る。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BF%E3%83%88%E3%83%A9%E3%82%AB%E3%83%BC

 私はトラムが好きだが、トラムが走っている街も好きだ。今もトラムが走っているということは、それほどひどい渋滞はないということだし、それほど広い街でもないから、トラムを降りて散歩するのにもちょうどいい広さだ。その例外だったのは、このブログにも書いたミラノだった。「ちょっとそこまで・・」という気分で夕暮れ時に乗ったトラムだったが、ひたすら北へ1時間近く走っても終点に着かず、途中で下車して引き返したことがあった。プラハのトラムも、路線によっては始発から終点までかなりの距離を走るから、トラム遊びは昼間がいい。

 

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  まさか平日休館とは思わないから、初めて行った日は入れず。

 

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 休日に行ったら、開いていた。"MUZEUM"の文字が見えた。平日休館は、ボランティアの運営だからだろうかと想像した。

 

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 乗用車もバスも、丸い車体と丸いライトの時代が愛らしく、美しいと思う。博物館前の線路は道路に通じているから、休日には昔の車両が博物館を出て、街を走ることもある。シュコダ706RTO(1956~72)。

 

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 鉄道馬車の時代があった。

 

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 木製車両がいいなあ。

 

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 これは、たぶん1955年から62年まで製造されたタトラT2だろう。こういう「ひとつ目」の車両はこれで終わり、1960年から1989年まで製造された「ふたつ目」のT3型に代わる。T3型は、まだまだ現役で走っている。

 

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 タトラ社のトロリーバスT400は、1948年から55年の製造で、プラハでは1970年代初めまで走っていたらしい。

 

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 なんだろうな、この車と思ったので、受付けのおばちゃんに聞き、冊子の展示品番号で教えてくれた。屋根に取り付けた台が上下する高所作業車だとわかった。

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 1947年から58年まで生産されたシュコダ706RO。SUCHDOLはプラハの地名。この次のタイプが、すでに紹介した706RTO。

 

 交通博物館の詳しい探訪記がある。もっと写真を見たい、深く知りたいという人は次の記事をどうぞ。

https://4travel.jp/travelogue/11402299