1243話 プラハ 風がハープを奏でるように 52回

 乗り物の話 その6 料金 前編

 

 プラハのバス、トラム、地下鉄は共通のキップを使う均一料金制だ。キップは地下鉄駅やトラム駅などに設置されている自動販売機か、街の売店などで買っておく。バスやトラムの車内ではキップを買えない。あらかじめ買ってあるキップを駅やバスやトラムの車内にある改札機にキップを差し込み、使用日と時刻を自分で刻印する。検札機を素通りする人が多いが、それだけ無賃乗車が多いということではなく、学生や勤め人など定期券所有者が多いからでもある。旅行者用でも1日券や3日券などがあり、いちいち検札機を使う必要がない。

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 地下鉄の自動券売機。ここで買ったキップは、バスやトラムでも使える。あらかじめまとめて買っておくのが、散歩のコツだ。

 

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 コインのみ使用可能だから、いつも多めの小銭を持ってないと困る。クレジットカードが使える機種もあり、一度試したら、カードが戻ってこないトラブルがあって、数分困惑したことがあった。以後カードは使わない。

 

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写真左が地下鉄ホームからの出口、右側が入口。写真中央と、右に黄色い検札機が見える。右側の検札機で、オレンジ色のTシャツを着たおばちゃんが、キップを検札機に差し込み、自分で検札(使用日時を刻印)しているところ。ヨーロッパでは長距離区間でも、こういう方式が多いと思う。

 

 これから料金の話をするので、チェコの通貨を確認しておく。通貨単位はコルナで以下Kと略す。1Kは約5円。

 時刻が需要なのは、使用時間で料金が違うからだ。30分有効券が24K、90分有効券は32K、子供料金は半額。1日券は110K、3日券は310K。もっと長期の定期券のようなものもあり、買おうかと思い料金を調べたら安いと思い、駅の窓口に行った。詳しい事情を調べるとほかの料金も加算されて、全体的には割安感はないのでやめた。

 使用時間が決められているが、その時間内なら1枚のキップでバス→地下鉄→トラムと乗り継いでもいい。日本のような改札口はないから、物理的には毎日ただ乗りができるのだが、もちろん検札はある。スペインやモロッコではたびたび検札に出会ったが、プラハでは、ひと月ほどいて、ほぼ毎日乗り物に乗ったが、検札はたった1度見ただけで、私自身は検札されていない。

 検札を見たのは、地下鉄ムステック駅だったと思う。ホームに行く下りエスカレーターを降りたところ、ホームのすぐ近くだった。長い下りエスカレーターの降り口でキップを調べているから逃れようがない。私は財布からキップを取り出し、右手に持って準備をした。制服の男が4人いるが、3人は立ち話をしている。検札をしているのはひとりだけだ。私には近づくことさえしない。無視、あるいはフリーパスだ。私がただ乗りなど絶対にしない、見るからに善良な旅行者に見えたからか、あるいはチェコ語も英語もできそうにない外国人だからかかわると面倒だと思ったからかわからないが、私は無視された。結果的にはこれが唯一の検札目撃体験だが、稀有な体験だろうと思い、検札者をやり過ごしたら振り返って、検札ぶりを観察した。

 相変わらず、働いているのはひとりだけだ。犯罪者発見率、つまり検札したら違反していた者を発見する率は高い。キップを持っていない者はもちろん、キップに刻印していない者も同罪だ。罰金は800K。30分券の33回分だ。ということは、毎日タダで乗っている人が、月に1度捕まるくらいなら、ただ乗りの方が安くなる確率だ。あくまで確率だから、物事は計算通りにはいかないのだが。

 捕まったからといって、あらがう者はいない。確信犯だ。財布からクレジットカードを出し、支払い、それでおしまい。検札者も違反者も事務的で、1分で罰金の支払いは終える。この罰金は、条件によって減額や増額もあるようだ。こういう悠長なことができるのは、旅客が少ないからで、日本の大都市の交通機関では無理だ。

 

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 自動検札ならぬ、自分検札をして、ホームに。この駅も、朝夕の通勤時には割合混む。「混む」といっても、もちろん東京や大阪の「混む」とはまったくレベルが違う。