チェコの食文化 その4 トンカツとコロッケ
私がフードコートによく行ったのは、いくつかの理由がある。まず、ひとりで気軽に食事ができることだ。フードコートの料理は基本的にひとり分を単位にしているから、普通の食堂ではひと皿では多すぎる料理でも、フードコートなら食べることができる。
安いというのも魅力だ。日本にはラーメン屋や牛飯屋などファーストフード店が各種多数あるが、そういう店舗がないチェコのような国では、フードコートはありがたい。プラハの場合、郊外のショッピングセンターのフードコートでは、ひとり80~130コルナが相場だろうと思う。日本円にすれば、400円から650円といったところだ。一皿の量が多いから、小食の人ふたり分くらいある店もある。セルフサービスだから、チップがいらない。これ以下の金額で食事をするとなると、ピザの立ち食いだろう。ケバブだと、フードコートの安飯と金額はさほど変わらない。
フードコートが便利な理由はまだまだある。飲み物を注文しなくても、スーパーで買った水で食事することもできる。料理がすでに並んでいるから、メニューを読んで注文する必要がない。言葉がいらないのだ。「これ」と指さすだけでいい。すいていれば、さまざまな料理をゆっくり眺めることができる。チェコ料理という範疇に入るのはどういう料理なのかが、現物で確認できる。確認できないのが、ふたがしてあるスープ類だけだ。
CESKEという文字から、チェコ料理だとわかる。
こういう写真をみれば、チェコ料理とはどういうものかが、だいたいわかる。こういう料理が、500~600円。西ヨーロッパと比べると、格段に安い。
食材が、キャベツ、ニンジン、ジャガイモ、ベーコン、パスタだということがわかる。
こういう料理は好きだが、体重に悪い。
肉料理の一例。フォークが刺さっているのが、ブタのひざ肉のロースト。注文があれば、この肉塊を切り分ける。
煮込み料理が多いのはわかっていたが、意外だったのは揚げ物も多いことだ。それも、日本でいう「フライ物」、パン粉をつけて揚げたものだ。トンカツがある。その起源はウィンナー・シュニッツェルだろう。ウィーンという名がついているが、その起源はドイツとかイタリアとかいろいろ説があるようだが、いまではウィーンの名物料理になっている子牛のカツレツだ。チェコではスマジェニー・ジーゼック(Smazeny rizek)ほか、Veprove rizekなどいくつかの名前があり、私には区別がわからない。smazenyは「揚げる」、veprovoは「ブタ肉」という意味だが、rizekがわからない。チェコでは、牛肉ではなく豚肉を使うことが多いようだ。日本でも豚肉が主流になり、トンカツになった。チェコにトンカツソースはない。しっかり塩味がついているから、レモンを絞って食べる。
揚げ物コーナー。手前の円形のものは何だろうと思い、注文してみた。メンチカツか、ハムカツか?
これを何と言えばいいか。細かく挽いたブタ肉のカツ。歯ごたえのないハンバーグカツ。キュウリのピクルスがうれしかった。
細かいパン粉をまぶして揚げた料理は何種類かあるが、写真メニューに“krokety”というのがあって、「ははーん」とひらめいた。ポルトガルでもスペインでもイタリアでも食べているコロッケだ。食べてみた。俵型で、ジャガイモだけ。味は、多分、塩コショーだけ。日本のコロッケと比べると、柔らかい。コロッケの位置は、独立した一品料理というよりも、フライド・ポテトやマッシュド・ポテトのように、ジャガイモ料理のひとつで、メインディッシュの付け合わせのひとつだろう。
これが、コロッケ。牛肉のドゥミグラスソース煮込みが載っていた。だから、これで満腹。