最終章 落穂ひろい 3
■スメタナ・・・チェコの有名作曲家と言えば、ドボルジャークとスメタナだろう。現場で聞いてみようかという思いつきで、我がウォークマンに楽曲を入れておいた。初めて聞く曲はない。スメタナといえば、交響曲「我が祖国」が有名で、とりわけ第2曲「バルタバ」(モルダウ)がよく知られている。いままで何度も聞いているのだが、プラハで聞いていて、「ああ、そうか!」と気がついた。かつて野坂昭如や長谷川きよしが歌った「黒の舟歌」と同じメロディーなのだ。歌詞からして、明らかにヒントを得たに違いないが、ネットでの指摘は見ていない。
https://www.youtube.com/watch?v=xihiNhEqt6Y
https://www.youtube.com/watch?v=itPrkIT3vB0
さだまさしがこういう歌を作っていたことを今知った。「男は大きな河になれ」
https://www.youtube.com/watch?v=1M6JJbyDywo
■だまし絵・・・チェコ特有かどうか知らないが、壁面のだまし絵をよく見かける。壁は平面なのだが、絵によって立体に見せている。場所によっては、舞台の書割のような絵もある。壁に窓の絵が描いてあったのはイタリアにあったと思うが、あれは新しかった。チェコで見たのはもっとシンプルな窓の絵だったが、あまりにも多いので写真を撮るのをわすれてしまった。
石積みの建物だと思っていたのに、よく見るとコンクリートの壁面と石積みのように加工しているものも見ている。
2階の壁面が平らだが、凹凸があるように見える。
この壁も・・・、
この壁も・・・、
よく見ると、こういう絵が描いてある。
チェスキー・クロムロフ城はだまし絵が多く、この壁面もそうなのだが、あまりに多くあり、これ以外撮影しなかった。
■リンゴ・・・歩道に伸びた枝にリンゴが実っている。道路にリンゴがいくつも落ちている。小さなリンゴは、宿の朝食で食べ放題だったが、酸味が強く、さほどうまいものではなかった。江戸時代の日本のリンゴもこのように小さなもので、明治になって西洋の大きなリンゴが入ってきた。
スペインのアンダルシア地方では、街路樹や公園の樹木がオレンジだったことが何度もある。道路の両側に、たわわに実るオレンジが続き、手を伸ばせば届くほど低い位置にオレンジが実っている。「取らない」という常識があるのか、「当たり前すぎて誰も取らない」のか、「あれはまずいので誰も食べない」のか気になった。オレンジが珍しいわけではもちろんないが、街路樹のオレンジは地上の楽園を感じた。
私にはリンゴはそれほどの魅力はないが、熱帯育ちの人には「宝が路上に放置されている」という光景なのだ。ドイツで暮らすタイ人女性を描いた小説『私は娼婦じゃない』(パカマート・プリチャー、石井美恵子訳、めこん、1997)に、公園のリンゴをとろうかどうか悩むシーンがあったことを思い出した。
プラハの中心部をちょっと離れると、空き地のリンゴをよく見かける。手が届くところにリンゴがなっていて、歩道にもリンゴが落ちている。
最後に、気になった建物の写真を少し紹介しておこう。
手動信号機つき路地。路地に入る人がボタンを押すと、自分側に青信号がつき、反対側入り口に赤信号が付く。
動物園の反対側にこういう屋敷があって、びっくりした。18世紀の貴族の館だったトロヤ城。現在は美術館ということらしいのだが、入り口が見つからなかった。
この窓は、十字架を意識したのか、たまたま偶然なのか。
こういう空中廊下はいいなと思って眺めていたのだが、建物をよく見ると、表面はコンクリートだとわかる。偽石積み建築とでも呼ぶのだろうか。