1275話 デジタルカメラ

 今は、3代目のコンデジ(コンパクト・デジタルカメラ)を使っている。デジタル一眼レフカメラは高くて重いから、買う気はそもそもなかった。生涯、もうカメラは買わないものだと思っていた。だから、最初のデジカメは買ったのではなく、もらったものだ。2004年、期せずして大同生命国際文化基金の地域研究特別賞をもらい、当時、発売されたばかりのNikon coolpix5200を副賞としていただいた。当時の高価なコンデジで、5万円前後の価格で売り出されたらしいが、使う気はなかった。5年ほど前だったか、このカメラを持って旅に出たのだが、液晶画面が切手よりはやや大きいという程度だから見にくい。そこで買い替えたのだ。このブログ用だ。

 コンデジは人気がないから、中古が安く手に入る。ありがたい。ここ数年、Nikon COOLPIX P310(24~200ミリ)を使っている。その前に使っていたのも同じカメラだが、落として液晶画面が割れてしまったから買い替えた。やはり、E1.8レンズはいい。他社のカメラを知らないから「これがベストだ!」などと言えないが、このカメラで特に問題はない。電池の消耗は激しいので(他機種との比較ではない。単なる感想だ)、充電済みバッテリーを常に2個用意している。ポケットに入る大きさで、室内でもストロボなしで撮影できるのがうれしい。夜も三脚がいらない。手持ちで、早いシャッタースピードで撮れる。 

 昔は50本から100本のフィルムを持って日本を出た。現像代金も含めて1本2000円と考えると、フィルム代だけで100本なら20万円だ! 東南アジア取材なら、航空運賃よりもフィルム代の方が高かったのだ。しかも、重い、かさばる、温度湿度X線を気にかけないといけない。それが今は数百円のSDカードで済む。当然、現像代は要らない。天下のクラマエ師がデジカメを買おうかどうか考えていたころ、「1回の取材に必要なフィルム代で、デジカメが買えるんだよなあ」と言っていたのを思い出す。

 私は写真の勉強をしたことはないし、カメラのこともよく知らない。写真を撮りたくてカメラを買ったのではなく、取材費が少ないのでライターが写真も撮らないといけない事情で、しかたなくカメラを買ったにすぎない。だから、最近まで、旅にカメラを持って行かなかった。自分の目で見ればそれでいいと思っていたからだ。

 旅先で、旅行者のカメラを見ていると、スマホが圧倒的に多く、次が一眼レフで、コンパクトカメラ使用者は極端に少ない。それが今のカメラの売れ行き傾向なのだ。私が理解できないのは、一眼レフ使用者たちだ。高額カメラを持っているだけで満足しているマニアは別にして、プロが高額のカメラとレンズを使うのはわかる。高性能超望遠レンズを使う人や、ポスター以上の大きさに引き延ばすとか、北極や砂漠や山岳地など極地で撮影できる信頼感がほしいとか、超高速でシャッターを切りたいというのなら、高価な一眼レフを使う理由はわかる。しかし、たかが素人の旅行写真だ。軽くて、小さくて、安価で、撮りたいときにすぐさま撮れるカメラがいいに決まっている。私のコンデジでも、シャッタースピード優先、絞り優先などマニュアル撮影ができる。魚眼レンズは使えない(スマホ用の魚眼レンズは100円ショップで買える)し、フィルターも使えないが、そんなものは必要ない。私は200ミリくらいの望遠で充分だと思っているが、望むならば超望遠撮影ができるコンデジもある。キヤノンのパワーショットSX530HSなら、24~2400ミリのコンデジだ。フェイスブックなどに使うくらいなら、それで問題のない画質だろうと思う。コンデジだと「画質が悪い」と批判する人がいるが、いったい何に使う写真なのだろうか。「地球の歩き方」に使うような小さな写真なら、コンデジで充分だと思う。このアジア雑語林に載せた写真の画質に問題ありと思ったことはない。

 スマホコンデジでいいのに、重くて高い一眼レフを買う理由がわからない。ファインダーが欲しいという理由は私もわかるが、ファインダーのせいで多くを犠牲にする気はない。ミラーレス一眼ならやや小さく軽くなるが、けっこう高い。交換レンズも欲しくなる。素人レベルで言えば、スマホコンデジでいいのに、一眼レフを使いたがる理由が私には理解できないのだ。「おしゃれ」に見られたいからか?

 ちなみに、私がスマホで写真を撮らないのは、スマホを持っていないからというだけのことだ。