1301話 スケッチ バルト三国+ポーランド 20回

 日本

 

良さそうなホステルに行き、この先1週間ほど空室があるかどうか聞く。「ちょっと調べてみますね」とスタッフがパソコンに向かい調べていて、その間に話しかけてくる客がいて、電話がかかり、「いいですよ、急ぎませんから、そちらの用件を先に」と私が言う。1日だけの空室確認ならすぐに済むのだが、何日も連続だと、ちょっと時間がかかる。

「大丈夫ですね。ベッドをおさえますか?」

「はい、お願いします」と言いつつ、パスポートを出すと、

「Oh, Japan!  Cool!」

そう言われたことが、2度ある。NHKの回し者か(NHKBS1  “Cool Japan 発掘!かっこいいニッポン”)。「日本=かっこいい」という時代になっているんですね。

あるいは、こういう体験を、昨年のプラハでも、今回のバルト三国の旅でもしている。安宿のリビングルームで6人ほどの旅行者と雑談が始まり、しばらくして「ところで、どこの出身?」と聞かれて、「日本」と答えると、“Uhh Cool!”。これはつまり、彼らが日本人旅行者に出会う機会が少ないということでもあるだろう。日本人旅行者と話す機会が少ないから、「おお、珍しい、日本人か!」ということでもある。昔と違って、安宿に泊まる日本人が少なくなったのは確かだ。日本人が少ない上に、いつもスマホに向かっているので、旅行者と話をしている姿を見ていない。

「8月にモスクワに行かなきゃいけないんだ、絶対」

スペイン人の大学生が言った。エストニアのタリンでのことだ。入手困難なコンサートチケットを幸運にも手に入れたので、留学先のスウェーデンから出かけるのだという。誰のコンサートか知らないが、聞いてもどうせ知らない人物(あるいはグループ)だろうから、聞かなかった。

「モスクワのあと、日本に行ってみようと思うんですよ。日本も絶対行きたい国なんですが、普通に飛んでもつまらない。だから、シベリア鉄道に乗って、途中から中国に入り、上海かどこかから船で日本に向かうというのはどうです?」

旅行相談を受けた私は、首を振った。

「鉄道は高い。とんでもなく高く、中国からの船も安くないよ、調べてごらん」

大学生はスマホで鉄道料金を調べて、「ウォー、なんでこんなに高いんだ」と驚いている。私も、今回バルト三国シベリア鉄道経由で行こうかと考えて、料金を調べてあまりに高いので断念した。鉄道は飛行機よりも高いというのは、いまや常識だ。

「おもしろそうなルートで旅すると高くつくもんだよ。往復切符で旅をするのが、いちばんつまらなくて、いちばん安い。だから、比較的安くておもしろい旅をしたいなら、モスクワから日本に飛ぶ片道の安い航空券を探して日本に飛ぶ。もし、あればだけどね。そして、日本から中国に渡り、陸路でベトナムなど東南アジアに向かうというのは、どう?」

「うーん、悪くない。あっ、ビザはどうかな。えーと、調べてみるね。スペイン人は、3か月ビザなしで滞在できる。よし、問題なしだ」

ベネズエラの若者も、「日本を見たいんだよね。ぜひ行きたいんだけど・・・」と言った。しかし、その表情は暗い。「観光でもビザがいるんだ。ビザを取るには、6000ユーロだったか、かなり高額の貯金があることを証明しなきゃいけないんだ。ただちょっと旅行するだけでも、まとまったカネを作らないといけない。日本に行けるのは何年先になるか・・・」

私が日本人だと知ったポーランドの高校生。

天皇が代わりましたね。政治は、右翼の安倍晋三が力を持ち続けているけど、それで日本は大丈夫ですか?」

日本の首相の姓名を知っていて、すぐさま正確に口にできることに驚いた。とくに日本を研究しているとか、日本マニアというわけではない高校生だ。

リーガの駅前、横断歩道で信号が変わるのを待っていたら、30代後半くらいの女性に声をかけられた。

「あなた、〇〇でしょ、そうでしょ!」と日本人らしい名前を何度も口にしたが、その名に心当たりはない。ラトビアで有名な日本人の名前なのか、それともなにかの詐欺か?

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  上段右のTAKE6は、アメリカのコーラスグループ。下段のANA MOURAはポルトガルのファド歌手。CDを持っている歌手のコンサートだが、たいてい日程が合わない。ラトビアのリーガ。

 

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 ラトビアは刺繍や毛糸の編み物などの手工芸品で有名らしいが、この窓の写真を撮っただけで、店には入らなかった。

 

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 エストニアのタリンを歩いていたら、東アジア風のこういう大きな家に出会い、「アジア趣味の成金の邸宅か?」と、その正体が気になって正面にまわると、中国の公館だとわかり、「あ~、なんだ」。