木造住宅 その2
角材で建てたように見える家はどのように建てたのか。その謎は、すぐに解けた。古ぼけて、家の壁が壊れかかっているところを観察すると、丸太を積んだのではなく、板張りだ。こういうのを、下見板張りという。
下見板に注目して、証拠写真を撮った。
そういう建築用語は、『日本の近代建築』(藤森照信、岩波新書、1993)を何度も読んだのでよく覚えている。その部分を引用する。
「ここで課題となるのはヨーロッパ系の板張りの中の水平に張るタイプで、下見板張りといい、板そのものは下見板という。板の継ぎ合せ方から二つに分かれ、一つは上の板の端と下の板の端を半分ずつ切り欠き突き合わせて継ぐやり方で、ドイツ式、フランス式などヨーロッパ大陸に多く、これを日本では“ドイツ下見”と呼ぶ。もう一つは板と板の端部を鳥の羽根のように重ね合わせる継ぎ方で、ドイツ下見は平らに仕上がるのにこっちは板がわずかに傾き、継ぎ目に段がつくから近くで見ればすぐ分かる」
文章だけではわかりにくいだろうが、次の図を見れば、もっとわかるだろう。図の上段右が日本の下見板張りだ。
https://www.lixil.co.jp/reform/yougo/sekou/naiheki/21.htm
これもわかりやすいか。
http://www.kenchikuyogo.com/315-to/005-doistu_shitami.htm
私がバルト三国で見た木造住宅のログハウス風に見えたものは、どうやら日本で「ドイツ下見板張り」という物だったとわかった。昔の農村では丸太で家を建てた。次は角材にして家を建てた。その後、製材の機械化技術が進み、板が簡単に手に入るようになり、資源の節約と扱いやすさのために、丸太ではなく板で壁を作ることにして、この下見張りにしたのではないだろうか。
以下、エストニアのタルトゥの木造建造物を紹介する。まずは、すでに写真を載せたことがあるタルトゥ駅。木造の駅舎だ。
木造建造物というだけでなく、電柱にも注目して写真に撮った。
「見せて稼ぐ」ために建てたらしい逆さの家。外壁は木だが、なかには入っていないので、骨組みが木か鉄骨なのかわからない。
レンガ造りかもしれないという住宅だが、モルタルがはがれている部分から、木造モルタル造りだとわかる。
窓の写真を撮っていたら、ネコと目が会ってしまった。