1318話 スケッチ バルト三国+ポーランド 37回

 木造住宅 その3

 

 街で見かける木造住宅は古い家だ。郊外の新築住宅だと、外壁をモルタル仕上げにしている家もあるので、木造かレンガ造りかは道路からちょっと見ただけではわからない。新築も木造という住宅があるだろうかと思いつつ散歩をしていたら、エストニアのタルトゥの住宅街で見つけた。築後数十年ほどたった家が並ぶ住宅地に、建築中の木造住宅を見つけた。

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 タルトゥの住宅地で、建築中の家を見つけた。傾斜地だから、1階部分(表通りからは地下部分)は鉄筋コンクリートにしてある。

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 表通りの玄関側にまわって、内部を見る。どんな断熱材を使っているか知りたかったが、その工事はまだだった。

 

 考ええてみれば、都市部でも新築の戸建て住宅が圧倒的に木造が多いというのは、アジアでは日本だけかもしれない。韓国では最近木造建築物が多少増えているようだが、そのなかには公共施設や伝統家屋の復元のようなものも含んでいるうえに、韓国人は戸建て住宅よりもアパートが好きという好みの問題もあり、韓国全体で見れば、木造新築住宅というのは、日本よりもはるかに少ないようだ。韓国の住宅に関する日本語の論文が多数読めるので、興味のある方はどうぞ。例えば、これ。

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 アメリカ大陸の木造住宅は、カナダとアメリカには多いということはわかっている。ヨーロッパではスカンジナビアバルト三国ということもわかっているが、東欧や旧ソビエト圏の事情はわたしにはわからない。『地球生活記』など、世界の家を撮影している小松義夫さん(敬愛するひとりだ)に、この木造住宅の話をすると、「ロシア全体はわかりませんが、シベリアの方は材木が豊富なので、木造住宅はたくさんありますよ」とのことだった。

 「日本は木の文化、外国は石の文化」など決めつけない方がいい。

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 タルトゥの高級ホテルなどが立ち並ぶ一角に、廃墟となった家を発見。ちょっと気になる点があって、近づいた。

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なんだ? 丸太が見えるぞ。

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 なるほど。レンガで地下室と基礎を作り、その上に丸太の家を建て、外壁は土壁にしてあるという「家の歴史」が、この部分からうかがえる。日本では、竹を格子状に組んだ竹小舞(たけこまい)の上に土を塗り込んで壁にするのだが、竹がないここでは細い木を使っているのもわかる。

 

 

 

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 こちらは、ラトビアのリーガ。新市街にも木造住宅が残っている。

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 この家は3つの窓をふさいでいるから、住人はいないらしい。

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 こういう大きな建物だと、外壁は板張りだが骨組みも木かどうかわからない。

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 この家の下見板張りはやや新しそうだ。

 

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 この一角は、こういう新築木造家屋がいくつかあり、事務所や店舗になっている。この裏手にはやはり新築のアパートがあり、そのアパートの住人である若い女性が、この地区の説明をしてくれた。ここは、「レトロ風新商業地区」という感じがした。雑誌の見出し風に言うと、「今、木造が新しい!」。

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 ここは多分リフォームだと思う。こういう建物を壊してガラス張りの高層ビルを建てない所がいいのだが、それは環境やデザイン思想によるものか、あるいは大きな商業ビルを建てるような需要がないという経済事情によるものなのかは、わからない。