食べる話 その5 ツェペリナイ
芸人ヒロシが出演しているテレビ番組、「迷宮グルメ 異郷の駅前食堂」(BS朝日)が好きで、昨年の第1回放送からHDDに録画して見ていて、見終わっても「削除」する気になれず、DVDに録画してすべて残している(再放送が多いので、新規に保存する番組はそう多くはない)。ヒロシが、東欧やアジアの、外国人観光客がほとんどいない地区を歩き、食堂を見つけ、ただ食べるだけという番組で、料理の詳しい説明はない。ただし、ヒロシがトンチンカンなことを言ったときは、字幕で訂正が入る程度の説明はある。
食レポでおなじみの、ウソ臭いコメントもない。スタジオ収録なし、ゲストなし、CGなし。料理をちょっと口にして、「さて、次の店です」という演出もない。食べ物をゴミにする不始末はしない。おそらく、日本のテレビで最初にしてこれが最後に放送される街や地区が登場する。名所旧跡大観光地に興味のない私には、まことに好都合な番組だ。製作費が少ないということがプラスに作用した例だ。
旅をしていると、私がヒロシのようなことをしているのに気がついた。例えば、リトアニアのビリニュスを歩いているとする。腹が減った、何か食いたい。安そうなレストランを見つける。しかしメニュが読めない。料理の注文ができない。そこで、ヒロシのように言う。「Lithuanian food , Please!(リトアニア料理をください)」。リトアニアの料理なら、なんでもいいよ、試してやろうじゃないかという気分だ。
リトアニアで、このセリフを3度口にして、3度同じ料理が出てきた。ツェペリナイ(cepelinai)である。このツェペリナイと、すでに紹介した冷たいスープが、リトアニア料理の代表格だ。ツェペリナイをひとことで言えば、ひき肉やチーズを詰めたジャガイモ団子である。料理名はかの飛行船ツェッペリンにちなんだというから、1930年代以降に登場した料理だろう。その作り方は家庭によって違いがあるだろう。その例をふたつあげておく。
https://www.youtube.com/watch?v=IWSqjYBVDFQ
https://www.youtube.com/watch?v=aAbmKO6zGpI
出来上がった料理を見て、「残念!」と思った。もちろん、私の好みの問題なのだが、マッシュポテトで肉やチーズを包むか、あるいはコロッケのように両方を混ぜるか、どちらでもいいのだが、茹でないでほしかった。フライパンかオーブンで焼くか、コロッケのように揚げてほしかった。茹でると外側が葛湯のようになって、触感が悪いというのが私の感想だ。餃子と同じように、家庭では焼くよりも、一気にまとめてゆでる方が簡単なのだろう。効率がいいと思ったのだろうが、それならオーブンで焼いてくれてもいい。あくまでも私の好みの話だが、ゆでるより焼いたほうがうまい。
皆さんは、どうです? 茹でて、ぷにゅぷにゅのほうがいいですか?
ビリニュスの市場の食堂で。ここも、安めの食堂街がある。「リトアニアの料理」と注文して、まさにこの組み合わせ。ツェペリナイにヨーグルト、そしてすべての料理にディルがかかっているが、タイのパクチー攻撃のような臭気はないので安心だ。
気に入った料理ではないから、ツェペリナイだけをしっかり撮影しようという熱意がないが、これで姿がよくわかるだろう。