1514話 思い出話と歴史 その5

 

 旧知の大学教授たちとパソコンの話をしていたら、こんな話を始めた。

 「最近の学生は、スマホでなんでも済ませるので、パソコンが使えない学生が多くなってね。だから、授業でレポートの話をするときは、スマホとプリンターの接続方法とそのコードといった講義を科目ごとに毎年何度もやらないといけないんだ」という。以前はそういう教習をしなかったので、教授のスマホにレポートが送られてきて、読むのに苦労したといっていた。

 「大学生がスマホを持つようになって、パソコンが使えなくなった」という話はほかでも何度も耳にしている。スマホで文章が作れるし、検索もできるのは確かだが、だからパソコンを使えない学生が増えたという説は、必ずしも正確ではないと思う。私の授業をとった学生は、スマホで書いてプリントアウトしたものもいただろうが、多くは自分のパソコンか大学で自由に使えるパソコンを使ったと思う。なぜなら、パソコンをある程度使えないと就職に不利だとわかっているからだ、パソコンの基礎くらいはすでに習得しているのだ。パソコンに詳しくない私が書くのも変だが、エクセルやパワーポイントくらいは新入社員の最低限の技能になっているのではないか。ゼミの発表でも、パワーポイントを使う学生もいる。

 ということは、パソコンを使える大学生と使えない大学生の違いは、親の経済力や学生自身の就職への姿勢が関係しているのではないか。多くの大学では、パソコンを自由に使えるだろうから、自分専用のパソコンはなくてもいい。だから、親の経済力は関係ないかもしれない。大学を卒業しても、フリーターのような仕事をしているなら、スマホだけでなんとかなる。いわゆる、ちゃんとした企業で、ちゃんとした仕事をするなら、パソコンくらいできるのは当たり前で、そのほかにどれだけの資格や技能を身に着けておくかが就職の勝負と考えている学生は、「スマホがあれば何とでもなる」とは思っていない。だから、教授が語る「大学生とパソコン」の話も、その教授がどういう学生がいる大学に所属しているのかということで、大いに変わってくるはずだ。学生個人の考え方にも大いに関係があり、卒業しても就職する気はないと決めていれば、パソコンの勉強などしないだろう。最近本を出した芸人のバービーは、「パソコンは使えないので、スマホで原稿を書いた」と言っていた。1984年生まれ、東洋大学印度哲学科卒業のバービーは、パソコンが使えないと困る職業にはつかないと決めていたのだろう。

 話は前回の社員とパソコンの話に戻る。新入社員にパソコンを教える時代が終わり、新入社員の誰でも文書作成くらいは簡単にできる時代に入り、そして今、ふたたび「新入社員が、パソコンを使えなくてさ」と会社員が嘆く時代になった。図表が作れないといったこと以前に、新入社員はキーボードが使えないというのだ、ローマ字もよくわからないらしい。

 な~るほど、そういうことか。

 私はパソコンを毎日使っているが、エクセルもパワーポイントも使えない。研究発表や授業でパワーポイントが使えた方がいいかもしれないと思ったことはあるが。「黒板でいいや」と思っているので、ついにパワーポイントに近づかなかった。ちなみに、最近の学校をご存じない方のために書いておくと、ゼミをやる小さな教室以外は、黒板常備です。教師は指を白くしてチョークをつかんでいます。講師をやる前は、とっくにホワイトボードに変わっているものだと思っていたもので、ちょっと余談を。

 私は、スマホはまだ持っていない。このブログで度々書いてきたように、現在の旅行にはスマホは欠かせないことを痛感しているので、「次の旅の前には買っておこう」と昨年秋からYモバイルだのUQだのと、いろいろ情報を集めてみたのだが、旅行そのものが中止状態になってしまったので、スマホはまだ手にしていない。いつになったら手にするのだろうか。早くスマホを買いたいとはまったく思わないが、はやく旅がしたい。

 今、毎日触っているパソコンを、まがりなりにも使えるようになり、ブログを書けるようになれたのは、アジア文庫の大野さんと旅行人の「天下のクラマエ師」のご両人のおかげだ。パソコン購入と同時に教科書も買ったのだが、読むのがめんどうくさくて(よくわからなくて、と言ってもいい)、おろおろして不具合を起こすと、「こうすると、簡単ですよ」と教えてくれたのがご両人だ。

 私が書いたことは底が浅いので、さらに知りたい人のために、パソコンが使えない若者毎日新聞という資料があるが、私の考えとは異なる。