1524話 特別編 年末年始

 

 今回で、2020年の最後になる。調べてみると、今年は160話くらい書いたようで、400字詰め原稿用紙にして1000枚ほど書いたことになるらしい。新書4冊分くらいになる原稿量だから、いかにヒマだったかよくわかる。

 連載している「本の話」はまだまだ続くのだが、立花隆の本の話が終わり、大晦日になったので、特別編として「時節柄」の話をはさんでおこう。

 今年の春ごろは、「秋になれば、旅に行くことも可能かもしれない」などと、根拠のない楽観をしていたのだが、こんなに長くなるとは思わなかった。京大の山中伸弥教授は「コロナ禍以前に完全に戻ることがあるとは思わない方がいい。『だいぶ良くなったという事態』まで、早くても3~4年はかかるでしょう」と言っていて、自分の旅のスタイルと自分の年齢を考えると明るい未来は見えない。

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 コロナ禍で、上京したのはこのコラムで書いたようにたった1回だけだった。ということはブックオフ以外の本屋やCDショップに立ち寄ったのは1度だけだったということになる。近所の図書館は21年春まで1年ほどの改装工事をやっていて利用できないから、高額図書を読みに図書館に行くこともできないでいる。

 本はもっぱらアマゾンで買った。旅に出ないのだから、いつもより多くの本を読んだだろうと思うかもしれないが、旅に出なかったので読書の刺激がなくなり、あるテーマで徹底的に本を読むことはなかった。今や年寄りの趣味となったCDは、例年以上に多く買い込んだ。そのせいでもないだろうが、CDプレーヤーの調子が悪くなり、「買いなおすか」と情報をネットで調べた。CDそのものが老人趣味になってしまったのだから、CDプレーヤーも老人しか買わないオーディオ機器になったようで、ポータブル型以外の商品点数が少ない。ラジオで、若手アナウンサーが「CDを買ったことがないなあ」といい、その放送を聞いていた大学生が、「CDというものを見たことがない」というコメントを番組に送った。そういう時代なのだ。

 携帯電話、二層式洗濯機、CDプレーヤー、携帯ラジオ、携帯オーディオ(ウォークマン)・・・。はい、ワタシ、全部持ってます。

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 私がアマゾンで多くの本を買ったように、世間の人も読書の日々を過ごしていたようだ。旅に行けぬ不満を読書で解消しようというのか、講談社文庫の私の本の電子版が売れたという報告が来た。こんなことは初めてだ。印税総額が、単行本を1冊買えるくらいだから、まあ、たいした金額じゃないが、読んでみようと思ってくれた人がいるのがうれしい。「1円+送料」で本を買うよりも、それよりちょっと高いキンドル版を買うということらしい。私はまだ、紙に印刷した本を読んでいたい。

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 本を読みながらラジオを聴いていたら、映画宣伝のために出演した俳優が、「密室」、「男女7人」、「スマホ」という語を使って話をしている。「日本でリメイク」という言葉で、あの映画の日本版ができたことを知った。

 2018年春に、マドリッドで “Perfectos desconocidas”というスペイン映画を見た。まるで、一幕物の演劇のように、映画の98パーセントはダイニングルームとベランダで繰り広げられる。そして、登場人物がしゃべりまくる。英語の映画だったら、内容がわからなかっただろうが、幸運にも英語字幕付きだからなんとかついていけた。そして、この映画は、飛び切りおもしろかった。調べてみると、元はイタリア映画だという話を、このコラムの1134話に書いた。    

 その後、韓国版は「完璧な他人」としてリメイク。中国版は「来电狂响」。そして、ついに2021年1月、日本版が公開されるというのが、ラジオで耳にした宣伝だ。「おとなの事情 スマホをのぞいたら」スマホを持っていない人間でもおもしろかったのだから、スマホを使っている全世界の人間が「笑える恐怖」がこの映画だ。

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 2021年は、2020年よりも少しは楽しい年になったらいいね、お互いに。

 “I’ll be seeing you”を。

 “See you”(じゃ、またね)と同じ意味なのだが、ビリー・ホリデーが歌うと、会いたい人にもう会えない悲しさを歌っているように聞こえる。歌詞を読みたい方は、こちら。この歌のカバーは実に多く、レイ・チャールズエリック・クラプトンも歌っている。カバーバージョンを探してYoutube遊びをすれば、1時間ほど楽しめる。

 

 じゃあ、ちょっと休んで、また。