昔のガイドブックを買い集めているのは、コレクションするためではもちろんなく、旅行地の変化が記録してあるからだ。アジアの場合、住宅地にショッピングセンターができたり、安宿街ができたり、新たに橋がかかったり、鉄道ができたりといった変化をガイドブックで確認したいからだ。出入国事情の変化や空港からの交通機関とか、その国の旅行事情などの時代変化を知るにはガイドブックがいちばんいい。だから、東南アジアを中心に、ガイドブックを買い集めるようになった。
前回に続いて、「ガイドブックとアマゾン」という遊びをしたくなった。
ロンリープラネットのガイドである“Thailand a travel survival kit”の売価を調べてみると、84年版は1211円+送料398円だが、87年版は1万0325円+送料5995円だ。84年版が安いのは、日本の業者が日本から送るからだ。
私が持っているもっとも古いロンリープラネットの本、”South-East Asia on a Shoestring“1977は、1万3918円+送料340円だ。よくわからないことがある。この本には”first published 1977”となっているから初版だと思うのだが、この本の1985年を見ると”first published 1975”になっている。どういうことだ?
JICCは、現在の宝島社なのだが、ガイドブックに手を出したことがある。1980年代後半に出版した「宝島スーパーガイドアジア」はある程度持っているので、その後古書市場でどう評価されているのか、アマゾンで調べてみる。アマゾンの古書価格は、出品者が勝手につけたものなので、市場相場ではないが、まあ、遊び程度に考えて、ちょっと紹介してみる。
このガイドブックシリーズは、最初6冊が出た。最初は「アジアを知ろう」という編集方針だったが、のちに「アジアで遊ぼう」に変わっていった。それまで欧米志向だった女性客がアジアに出かけるようになったということだ。
それぞれの、7月5日現在のアマゾン価格を調べてみる。
『タイ』(1987)・・・2万9980円
『フィリピン』(1987)・・・30円。女性が魅力を感じない国は、観光評価が低い。
『インドネシア』(1987)・・・2889円
『シンガポール・マレーシア』(1987)・・・1万2988円
『台湾』(1989)・・・2358円
『香港・マカオ・広州(中国)』(1989)・・・出品ナシ
『中国・北京』(1989)・・・出品ナシ
『中国・上海・チベット・雲南・長江流域』(1985年)・・・3万0080円
『韓国』(1985)・・・1万7500円
『バリ島』(1986)・・・3998円
『広州・桂林・昆明』(1986)・・・2400円
『マニラ・セブ』(1986)・・・400円(このガイドの担当は、『おまえも来るか中近東』の森本剛史氏)。
『ソウル』(1986)・・・1561円
1980年代末に、簡単には旅をできない地域や、ラオスのようにやっと観光旅行が許されるようになった国のガイド「地球の歩き方フロンティア」の出版が始まる。1989年から90年末までに発売されたのは、『ベトナム』、『イスラエル』、『シリア・ヨルダン』、『サハラ・ナイジェリア』、『チュニジア』、『西アフリカ』、『アイルランド』、『ペルー』、『イースター島・チリ』、『タイ北部山岳民族を訪ねて』、パプア・ニューギニア』。
街歩きが好きな私は、このシリーズのガイドはほとんど買っていない。手元にあるのは『ラオス』(アマゾンで、498円)、『ベトナム』(同、540円)、『ブータン』(同、695円)の3冊。巻によっては数千円の値段がついていることもあるが、概して安い。これは正常な価格設定で、宝島スーパーガイドの方が異常なのだ。
「地球の歩き方フロンティア」とほぼ同じ時代に出版された「旅行人ノート」シリーズは、現在では旅行ガイドとしての実用性はあまりないが、それほどの値崩れもなく、古本にしては高価格を保っている。これは発行人の人徳によるものだろうか。