1618話 本で床はまだ抜けないが その26

 図書購入台帳 その2

 

 私の中学入学は1965年、中学卒業と高校入学は1968年、高校卒業は1971年だった。学年と西暦はずれるので、何年生だったかということはここでは省略する。1972年に私は20歳になるから、これから書き出すのは十代の読書というわけである。別の言い方をすれば、50年以上前の読書だ(と、ちょっとため息)。

 前回は、図書台帳をつけようと思いついたときにすでに持っている本を紹介した。今回は、初めて台帳に購入年を記入した1966年に買った本の一部を書いてみる。

これが世界一だ 記録がなんでもわかる本』(竹内書店)。1966年に出版されたこの本(下巻は1967年刊)が、日本最初のギネス記録の翻訳本だと思う。この時代は、「ギネス」は日本人のほんの一部がビールのブランド名として知っているだけで、世界記録のギネスはほとんど知られていなかった。

 何を読んだらいいのかまだよくわからない時代だから、教師が勧める日本と世界の名作文学から『車輪の下』(ヘッセ)などを読んでみたが、名作を手にするのはこの時代が最初で最後だった。このころ、なにがきっかけかわからないが、意味不明の読書をしている。ひとつはSFだ。『宇宙をかける男』(E・ハミルトン)、『SF入門』(福島正実)、『SFハイライト』福島正実)、『SFカーニバル』(フレデリック・ブラウン)などのSFだ。星新一の『悪魔のいる天国』は67年、『ノックの音が』は69年に買ったという記録が残っている。ショートショートをおもしろいと思ったようだが、これ以後星新一は読んでいない。

 もうひとつの謎の読書は、宝石だ。『新しい宝石』(菅原通済)、『宝石』(崎川範行)、「太陽別冊 宝石」(平凡社)などを買っている。開高健は最晩年にいきなり宝石に興味を抱いたのが不思議であったが、中学生が宝石に興味を持った理由もまた謎だが、その熱は数か月で冷めた。

 1966年に買った本で、その後の前川健一を予測できる本は、『デウスにっぽん』(大槻洋志郎・本間久靖)だ。「おもしろかった」と思ったようで、転校する先輩に餞別代りにあげた。今、アマゾンを見ると、1冊だけ出品されていたので、ちょっと懐かしくなって購入。海外旅行が自由化された翌年、船で南米に向かった若者の旅行記だ。

 図書台帳を見ていたら、1966年に『世界の音楽』(有坂愛彦、小学館)というのがあって、この時代にすでに「世界の音楽」という発想があったのかと知りたくなって、国会図書館の資料で調べると、著者と出版社の「世界」とはヨーロッパのことで、アメリカ人のガーシュインさえ入っていない。文学も音楽も、「世界」とはヨーロッパのことだったのだ。そういう時代だ。

 視界というより聴界といった方がいいのだろうが、当時としては世界の音楽に大きく一歩を踏み出しているのが、『ポピュラー専科』(中村とうよう)で、これは1967年に買った。初めて買った中村とうようの本だ。

 1967に買った本の一部を次にあげる。1968年に買った本だと勘違いして、1577話にすでに書いた。

世界でいちばん寒い国』(岡田安彦)。毎日新聞記者による“ソ連”のサハ共和国ベルホヤンスク訪問記。

サンドイッチ・ハイスクール』(植山周一郎)。AFSでイリノイ州サンドイッチの高校留学記。1966年の出版当時、一橋大学の学生だったのではないか。のちに有名人になる。

カラハリ砂漠』(木村重信

モゴール族探検記』(梅棹忠夫)。初めて読んだ梅棹の本だ。

海外旅行ABC』(三上操)

海外旅行入門』(ビル・ハーシー)。こういう海外旅行入門書は、まったく役に立たなかった。雰囲気本だな。

食物の歴史』(露木英男)。内容をまったく覚えていない。食品加工などの専門家だそうで、食文化に興味を持つ私とはほかの著作を読んでみようとは思わなかったらしい。