1625話 名前の話 その1

 

 オリンピックをちゃんと見ておけばよかった。競技の話ではなく、選手名の表示を確認したかったのだ。世界のどんな名前でも電光掲示板で表示できるシステムを知りたいからだ。

 ローマ字(ラテン文字)を使う言語が多いヨーロッパでは、オリンピックなどの国際大会での選手名表記に何の問題もないかというと、もちろんある。英語以外の言語には英語のアルファベット26文字以外に英語では使わない文字があったり、アクセントや発音を変える記号がつくものが多い。だから、スウェーデン語やデンマーク語の名前をそのまま電光掲示板に出すわけにはいかない。

 ネットで画像検索をすると、オリンピックの電光掲示板では国籍に関係なく、全選手名が「姓+名」の順で、姓は大文字で表記している(この情報の中に電光掲示板の写真あり)。これがいつからなのか、私はまったく知らない。しかし、国際放送の画面では、日本の選手名のローマ字表記は「名+姓」になっているという。

 日本のパスポートは、現在は「姓+名」の表記になっている。私のパスポートでは、1997年発行の小型青色パスポート以降は姓の下に名がくる2段表記になっている。それ以前は、1行で「名+姓」の順で表記するようになっている。余談だが、今、自分のパスポートを出して眺めていたら、現在のパスポートの有効期限が2022年4月だと確認した。今年11月になったら更新の手続きができる。忘れないでやっておかないと。いつまた使う機会がやってくるかわからないけどね。

 ネット情報をいくつか読むと、日本人名のローマ字表記は「名+姓」にすべしという意見を述べているのは、西洋迎合主義者と思われる人だ。西洋人と同じようにすれば、西洋人になった気分になれる人だ。

 外国人の名前の場合、まず、正式な表記がヨーロッパのかなりの国々や、アフリカや中南米公用語などのようにローマ字(ラテン文字)という場合と、アジアに多い非ローマ字の場合の違いがある。例えば、南北朝鮮の場合、正式表記は朝鮮語・韓国語によるものだが、対外的にはローマ字を使う。そのローマ字表記の規則は、両国ともあるようだが、どれだけ徹底されているものかよく知らない。多少は知っている韓国の場合は、あまり統一していないようだし、名前のローマ字表記はバラバラだ。漢字で書けば李という姓は、Ri、Ry、Rye、Li、Leeなど各自が勝手に表記している。北朝鮮なら、どう表記しても発音はカタカナで書けば「リ」になるのだが、韓国の場合は語頭のRやLは発音しない習慣があるので、「イ」となる。Leeなどとアメリカ人が喜びそうな表記をして、「ミスター・リー」などと英語で呼ばれてうれしがっていても、日本人が「リさん」といえば「イです」と訂正したがるだろう。ハングルが読めない外国人のためにローマ字表記をしているというのに、Leeで「イ」と呼べというのは無理だ。韓国語の表記では「リ」ではなく発音通り「イ」に変わっていて、正式には「I」が姓のローマ字表記なのだが、そういう表記は使いたがらない。例えば、俳優のイ・ビョンホンのHPはLEE BYUNG HUNだ。

 そういえば、HYUNDAIという自動車メーカーは、漢字では「現代」で発音は「ヒョンデ」なのだが、日本ではローマ字の綴りに合わせて「ヒュンダイ」と称していた。2020年に世界統一して「Hyeondae」と読ませることに決めたらしいが、英語表記は従来通り“Hyundai Moter Company”なのに、「ヒョンデと発音せよ」というのは無理だし、「Hyeondae」だって韓国人以外読めない。