1649話 パスポートとスマホ

 

 現在持っているパスポートの残存有効期限が6か月を切った。そろそろ更新の準備をしたほうがいいのだろうが  とりあえず「今は要らないな」と思うと、すぐ手続きしようという気にならず、いつも間には時が流れ、「あっ、いけない!」という事態になる人の仲間にならないように気を付けなければ。旅先で会った若い男は、「ひとり旅の婚前旅行です」と言った。出発数日前に恋人のパスポートの有効期限が切れていることがわかり、せっかく買った航空券だからと、ひとりで日本を出たのですと言っていた。

 このコロナ禍だから、いつの間にか、パスポートが失効してしまったという人もきっと少なくないだろう。パスポートの更新手続きをするにしても、この先「10年有効」が必要かどうかわからないが、自動車運転免許証を持っていないから、身分証明書として持っていてもいいと思っている。

 パスポート更新は、机の前に張り紙をしておくことにして、いつの日か外国旅行ができるようになった日のために、「スマホ世界に参入する」かどうかを考えなくてはいけない。そもそもこの用語がわからない。「スマホを買う」だと機械の購入だし、「スマホ契約する」が正しいのだろうか、その辺のこともわからないが、「スマホを使う旅」の準備をしようかということだ。

 日本で生活していて、パソコンを持っていれば、スマホなどなくても困ることはない。このコロナ禍だから、「地図アプリが・・」ということもない。私の場合、スマホはあくまで外国旅行用だ。もう5年以上まえからだろうか、旅先で電話機を探すのに苦労することが多くなった。ナポリならインド人が経営するインターネットカフェがあり、マドリッドなら駅の出口付近に公衆電話があることはわかっているが、バンコクだとそもそも公衆電話が少なく、見つけても壊れていて、ホテルからかけようとしたら、「外国への通話はできません」と言われて、ホトホト困ったのも、もう5年以上前だ。

 チェコの地方都市から、数時間離れた別の街に行くことにした時のことだ。路上のバス停でバスを待っていた。バスが来て、中国人客が乗り込んでいくが、皆スマホをかざして乗り込んでいく。車掌に「切符は車内で買うのか?」と聞いたら、「ええ? 切符を持っていないんですか?」と驚かれ、「席があれば売りますが、ほかの客が乗り終えるまで待っていてください」と言われてしまった。そのバスで着いた街の大きなバスターミナルには、切符売り場そのものがなかった。案内所もない。観光案内所でそのいきさつを話すと、「ネットで買うんじゃなければ、旅行社で買ってください」と言われた。

 ホテルも予約なしでは泊まれない状態になってきて、とくに土日祭日は飛び込みでは泊まれないことが多くなった。そういう旅行事情は、スマホを持って旅している人には「ありふれた日常」だろうし、大学で私の授業を受講した学生が、「スマホが使えない場所を旅行する気はまったくありません」とレポートに書いていたが、それに近い若者はけっして少なくないだろう。

 残念ながら、本当に残念ながら、スマホなしでは旅行しにくい状況になってしまった。航空券をパソコンで買うことにはわだかまりはなく、外国の国内線の航空券も買えるからむしろ「便利だ」と思っているのは矛盾だと言われれば、たしかにそうなのだが・・・。前回の旅を終え、「よし、次はスマホの旅かな」と思って帰国したら、このコロナ禍になり、「今すぐじゃなくてもいいな」と思っているうちに時間が過ぎた。

 じつは、ガラケーの携帯電話は持っている。母の体調が悪化していくなか、「万が一の連絡に」ということで、私も携帯を持たされることになったのだが、用がないのでほとんど使っていない。その料金は今も支払っているから、もしかしてスマホに代えれば安くなるかもしれないと思ったのだ。日本ではほとんど使わないので、楽天モバイルの「1GBまで0円」という料金プランが魅力で、機種は「実質1円」のものにすれば、今より安くなるはず。海外旅行に行けるようになったら、旅行をしているひと月かふた月だけ海外通話プランにはいればいい。

 「SIMカードのタイプを選ぶ」というテーマがまだよく理解できていないし、結局のところ月々総額いくらかかるのか、まだわからない。調べてもいない。どっちみち、日本ではほとんど使わないのだから、急ぐことはないなあなどと思っているから、楽天モバイル営業所に行ってパンフレットをもらってきただけで終わっている。