東南アジアに「地球の歩き方」登場
このブログの資料を読んだり文章を書いているときにCDプレーヤーから流れているのは、8枚組の”The Ultimate Soul Collection”に入っている1950~60年代のソウルミュージック。数年前に「ケースが破損」という理由で送料込みで731円で買ったのだが、今は3万円以上しているというお買い得商品。知っている曲だがじっくり聞いたことがなかったDoris Troyの”Just One Look”を、深夜、何度も何度も繰り返し聞いた。
それは、さておき。
1985年になって、やっと東南アジアが「地球の歩き方」の視野に入ってきた。日本の若者の興味のなかに、バリ島やタイ料理やプーケット&サムイ島が入ってきたのだ。東南アジアのガイドを、東アジアも含めてリストにしてみる。出版史の資料として、『地球の歩き方 30年史』には、こうした初版リストを載せてほしかった。( )内は、宝島スーパーガイドアジアの、その国や地域の初版年)
1984年 『地球の歩き方 中国自由旅行 1984~85』(1984、1985)
1985年 『地球の歩き方12 東南アジアA タイ 1986~87』(1983)
1986年 『地球の歩き方18 東南アジアB シンガポール/マレーシア』(1983)
1986年 『地球の歩き方16 韓国 1986~87』(1985)
1987年 『地球の歩き方31 台湾 1987~88』(1983)
1987年 『地球の歩き方29 バリとインドネシア 1987~88』(1983)
1987年 『地球の歩き方12 タイ改訂版 1987~88』
1988年 『地球の歩き方35 香港 1988~89』(1984)
1988年 『地球の歩き方39 中国B シルクロード 1989』
1988年 『地球の歩き方40 中国C チベット 1989』
1989年 『地球の歩き方19 シンガポール 1990~91』
1989年 『地球の歩き方18 マレーシア 1990~91』
1989年 『地球の歩き方 旅のグルメ201 香港』
1990年 『地球の歩き方59 フィリピン 1990~91』(1982)
1991年 『地球の歩き方 旅のグルメ203 タイ』
1992年 『地球の歩き方41 中国D 雲南・貴州 1993~94』
1993年 『地球の歩き方17 東南アジア 1993~94』
1993年 『地球の歩き方91 バリ島1994~95』
1997年 『地球の歩き方98 カンボジア 1997~98』
2003年 『地球の歩き方D25 インドネシア 2003~04』
日本交通公社、実業之日本社、ワールドフォトプレス、JICC出版局、ロンリープラネットなどのガイドブックを踏まえて、「地球の歩き方」シリーズが現れる。そして、今度は「地球の歩き方」を踏襲した類似ガイドが現れる。
上に上げた「地球の歩き方」の書名で気になることがある。1985年の『東南アジアA タイ』というのは、いきなり『タイ』だけをタイトルにするのにためらいがあったのだろうか。日本人に「タイって、何? 台湾?」という反応があった時代を、私は知っている。タイという国がまだ認識されていないから、「東南アジアのタイです」と説明したかったのだろうか。
インドネシア編も観光の実情を反映して、「バリとそのほか」という書名にしている。バリが独立して1冊になるのは『バリ島 1994~95』(1993)からで、インドネシアを書名にするのは、『インドネシア2003~2004』(2003)からだ。インドネシア最大の観光地はバリで、首都ジャカルタはあまり魅力がないから、『バリとインドネシア』という書名は理解できる。
NHKが「シルクロード 絲綢之路」を放送したのは、1980年から81年だった。これで日本にするクロードブームがおこった。第2部「シルクロード第2部 ローマへの道」の放送は1983年から84年だった。テレビでしか見ることしかできなかったシルクロードを多少なりとも実際に旅行できるようになったのは1988年以降だったことがわかる。
当時の日本人の意識の中の「アジア」はテレビ番組の影響でシルクロードだったが、実際に旅行できる「アジア」は、東南アジアになりつつあった。
上の出版リストを眺めながら書きたいことがまだまだあるから、次回に続く。