1752話 行きたくなる博物館はあるか

 名所旧跡に興味がないし、USJなどの施設にも興味がない。では美術館や博物館はどうか。美術に関心がないから、どのような分野であれ、行く気はない。博物館も、東京・京都・奈良・九州の国立博物館は実は美術館で、それが「国宝」であれ、「国宝クラス」であれ、「門外不出」や「秘宝」や「初公開」などのキャッチフレーズがあろうが、美術品を見に行く気はない。

 ネットでおもしろそうな博物館を探したが、私の関心分野と知りたいという要求の深さでいうと、民博(国立民族学博物館)以上か、肩を並べるような博物館はないという結論に達した。南関東の博物館は、行きたいと思えばいつでも行けるが、「わざわざ行く博物館」となると、候補地が見つからない。

 例外的に、唯一「ここは・・・・」と思えるのは、北九州市TOTOミュージアムだ。今まで行かなかったのは遠く、旅費がかかるという理由はあるが、「私の興味を埋めてくれそうもない」という予感があるからだ。TOTOが乃木坂に図書館を持っていた時代に通い、欲しい資料はコピーをしたが、もちろん不十分だ。

 私が知りたいのはしゃがみ式水洗便器の歴史なのだ。水洗便器はイギリスで生まれたという歴史があるので、「イギリス式トイレ」は水洗便器のあるトイレを意味していた時代もある。その当時、ヨーロッパ大陸では、おまるを使っていた。

 イギリスがインド亜大陸を植民地にして、現地の要求にあう「しゃがみ式水洗便器」ができた。そして、日本でも、のちのTOTOがしゃがみ式水洗便器を製造販売を始めアジアに輸出する。戦前期の話だ。腰掛式水洗便器がどのような経緯でしゃがみ式へと姿を変えるのかといった資料を探してTOTO図書館に行ったのだが、その資料はまったく見つからなかった。

 そういう過去があるから、今TOYOミュージアムに行っても、過去の製品展示はあっても、「いかにしてしゃがみ式水洗便器が生まれたのか?」という私の疑問に答える資料がこの博物館にあるとは思えないのだ。実は一度電話で問い合わせたことがあるが、そういう資料はないらしい。

 その昔、ビーチサンダルの歴史や下駄の世界史を知りたくて、広島県福山市の「日本はきもの博物館」(2013年に閉鎖)に行ったのだが、資料はなにもなく、がっかりして帰宅したことがある。愛知県犬山市の「野外民族博物館リトルワールド」に行ったのは何の資料を探していたのか忘れてしまったが、欲しい資料はなかった。資料がないということは、私がゼロから研究を始めなければいけないということで、そのとき研究しようとしていたことをあきらめたのだと思う。

 バルト三国にあるような野外建築博物館があれば、もちろん行く。縄文時代かそれ以前から現在までの日本人の住生活の歴史が見てわかるような博物館があればいいな。建物博物館ではなく、「旧○○家住宅」などとして、江戸時代の住宅が保存されているといった遺産は日本各地にあるが、日本史という流れの中で日本人の生活史をまとめて知りたいのだ。住宅紹介というのは、台所や便所や寝具や、衣食住すべての資料を展示することで、おもしろそうじゃないか。日本の住生活博物館は、まだない。こういう私の関心に応えてくれるもっとも近い存在は、千葉県佐倉の国立歴史博物館(歴博)で、もちろんすでに行っている。

 現在東京国立博物館で、「沖縄復帰50年記念 特別展『琉球』」をやっていて、「もしかしておもしろいかも・・」と思い、ネットで展示品を調べたら、やはり私が嫌いな美術展だ。だから、2100円も出してみる気はない。