体形や体力などの経年変化ではなく、趣味嗜好などに経年変化があるのだろうかと、ひまつぶしに考えてみた。世間でよく聞く、「年をとったら、肉よりも魚よねえ」とか、年を取ると詩吟に盆栽、日本舞踊にローンゴルフに精を出すというような変化が私にあるのかという自分調査だ。
こういうテーマで日々考えていたら、結論というか総評のようなものが浮かんできた。かつて嫌いだったり興味がなかった物事が、今は好きになったというような例はいくらでもあるが、逆に好きだったものが今では嫌いになったとかまるで関心がなくなったということはほとんどないようだ。さて、個々の事柄を見ていこうか。
◆読書
私の読書ジャンルは、いくつかある。東・東南アジア、食文化、旅行を含む異文化、建築、言語、出版、音楽芸能、その他ということになる。30歳代以降、こういう読書ジャンルは減りもしないし増えもしない。大河ドラマ関連の日本史とか自己啓発本や宗教書や健康美容本が登場するということはない。食文化本は数多く読んでいるが、いわゆる「お料理本」は1冊も買っていない。
ほとんど読まなくなったと言えそうなのは、東南アジア本だろうか。軍部独裁政権のミャンマーやタイに興味はない。ハノイに行ったときはベトナム本を少しは読んだが、ブログに旅行記を書いて以後、ベトナムの本は読んでいない。
東南アジアを見放したのかと問われれば、「どちらでもない」と答えたい。例えば、タイの本はガイドばかりで、「読むに堪える内容の本」など見つからないのだ。タイに限ったことではないが、読みたい本がないから、読まないというだけだ。
台湾の本なら、よく読んでいる。つい先日も、マンガ『九用商店』ルアン・グアンミン、沢井メグ訳、トゥーヴァージンンズ)を4巻まで読んだ。絵は下手、登場人物の関係性はわかりにくく、絵が下手だから誰が誰かわかりにくく、欠点が多いが、日本語版のほかフランス語版も発売されたらしい。アマゾンの「ほしい物リスト」の台湾本は増える一方で、読むのが追いつかない。東南アジアの本だって、台湾本くらいおもしろい本が次々に出ていれば、次々に読むのだ。タイの本がガイドばかりなのは、読者がガイド以外の本を求めていないからだ。
読書の傾向は旅先の傾向にも似て、十数年前からアジア旅行が減りヨーロッパ旅行が増えた。単純に、アジアのおもしろい本が減り、関心が薄くなったからであり、私がヨーロッパの事をあまりに知らないから、読むべき本がいくらでも見つかるという理由もある。
建築の本は、アマゾンで建築の本を数百冊検索したり、神保町の建築専門書店南洋堂の棚をチェックして、読みたい本はほとんど買った。買いたいが買っていないのは、あまりに高い本だからという以外にない。というわけで、最近はそれほど多くの建築の本を読まないのは、私が「おもしろそうだ」と思う本がもうあまりないからでもある。
ここ5年ほどだろうか、食文化の興味深い本がでているが、「さえ、どうしようか」と考えているうちにほかの分野の本を買い込むので、「一気に食文化本を!」ということにならない。
私の読書の原動力のひとつは旅行で、旅先の資料を買い集めると、たちまち段ボール箱いっぱいになる。旅行と読書は密接な関係にあるのだ。というわけで、次回は旅行の経年変化の話をしよう。