1783話 経年変化 その14

 

◆かわいい

 「笑っていいとも」(1982~2014)の冒頭だった。タモリは50代だっただろう。司会席のテーブルに、おそらくフジテレビが推しているイベントのマスコットがのっていた。タモリはそのマスコットを手でつまみ、「こんなもの、昔は何とも思わなかったけど、近頃『かわいいなあ』と思うようになってさあ」と独り言を言った。なぜか、そのシーンを覚えている。自分もそうだと思ったわけではない。ぬいぐるみもアニメの動物も、「かわいい」などと思ったことがない。ペットを飼ったこともないから、犬猫小鳥をかわいがったこともない。

 「かわいい」こととは無縁に生きてきたのに、ある日のテレビを見ていて、「かわいいなあ」と初めて思った。リスの冬支度だ。リスはドングリを口いっぱいに頬ばり、冬に備えて森に埋めるというシーンが20分ほど流れ、「リスがかわいい」と思った。思い返してみれば、同じリス科のプレーリードッグやタバルカン(モンゴルマーモット)を「かわいい」と思った過去を思い出した。そういえば、ウサギはもっとかわいい。

 しかし、だからといって、ネット上の画像を集めるわけではなく写真集を買うこともなく、ましてやぬいぐるみを買ったり、実際にリスやウサギを飼いたいという欲望はいっさいない。

 実をいうと、テレビを見ていて「冬ごもりのリス」を「かわいいと感じた」という自覚はなかったのだ。どうやら、自分はリスが好きになったらしいと感じたのはプラハの動物園でリスの写真を撮ったのだとわかった時だ。プラハで取った写真を通して眺めていて、「あれ、なぜリスを?」と気がついた。何も意識せずに、リスの写真を撮っていたのだ。動物園で取った動物の写真はリス2枚とバク1枚だけだ。

 このリスの写真を見て、その昔、タモリが「笑っていいとも」で言っていた「近頃、こういうのがかわいいと思うようになったんだよなあ」という独り言を思い出したのである。

 だからと言って、リスやウサギのぬいぐるみやイラストを集めようという気はまったくない、今のところは。