1812話 雑話の日々 その4

 

続美人

 たまたまある会で知り合いが集まったので、会の後、いっしょに食事をすることになった。いずれも出版関係の人たちだ。テーブルを囲んでアジア料理を食べた。食事が進むなか、ライターが編集者に言った。

 「あなたの会社、考えてみればみんな美人よね」

 そこは社長ひとり、社員一人の出版社で、食事をしている者はみな歴代の編集者を知っている。

 「そうだね、みんな美人だった」

 私はいたずら心が沸き上がり、言った。

 「あそこは、美人が採用条件なんだよ。容姿端麗が第一条件だから・・」と、私。

すかさず、「失礼な!」と、笑いながら当の編集者。彼女は大手出版社の編集者だったが、結婚を機に退職した。だから、編集の能力を買われて、この小さな出版社に採用されたことも、みな知っている。私の発言が冗談だということもわかっている。だから、私はもう一度突っ込んでみた。

 「美人だから採用したという説、ホントに、失礼だと思う?」

 彼女は、「う~ん」とうなりながら目が笑っている。彼女がちょっと自慢にしているのは、アメリカのレストランでビールを注文したら、「未成年に酒は売れない」と言われたことで、パスポートを見せて20歳どころか30歳も超えていると証明したというエピソードだ。

 

 2回目の東京オリンピック前だったからか、ふたりの元スポーツ選手が、別の番組なのだが、同じ話をしていた。

 「美人アスリートだって持ち上げられることが多かったけど、容姿に実力が追いついていかないので、苦しかったです」

 「でもね」と思った。例えオリンピックでメダルを取った選手でも、名も顔も忘れ去られた選手はいくらでもいるが、予選敗退でも「美人アスリート」とマスコミに認定された人だと、「モデル」とか「スポーツ・コメンテーター」などという名目で仕事が来るというのが現実なんだよ。マスコミと広告代理店とスポーツ団体は、「絵になる」選手を探しているだけだから。

 

 「あたしさあ、演技力はないし、おもしろいことはなにも言えないし、ただ『美人タレント』というだけでこの芸能界を生きてきたから、いいのはこの顔だけで・・・」と言ったのは、久本雅美。じつは、20代の彼女の写真を見たことがあるが、意外にかわいい。

 彼女が所属するワハハ本舗のHPを見ていたら、所属タレントにアジャコングと映画監督ヤン・ヨンヒもいることを知った。