1916話 雑話 その2

正当な差別

 LGBT法案の原案にあった「差別は許されない」という文言を、「不当な差別はあってはならない」と改めよというのが、自民党など右派の主張だった。「それなら、正当な差別はあっていいのか?」というツッコミを口にする人はいたが、それ以上言及する人はいなかった。

 実は、この世間には「正当な差別は許される」と思い込んでいる人が少なからずいる。「学校の入学希望者を性によって差別するのは正しい」と考えている男子校女子校支持者だ。私は、私立校の場合は入学者を男女別にするというのは、学校側の自由裁量の範囲内だと思う。性差別で入学希望者が少なくなって困るのは学校だからだ。しかし、国公立の差別校、例えば国立のお茶の水女子大や奈良女子大のような存在は、是正されるべきだと思う。LGBTQというのは、自分の性を戸籍によってはっきり決めない、決められない、決めたくないという人たちを考慮したもののはずだが、女子大は戸籍上の性別によって入学者を選別する。性適合手術のあと戸籍上「女」の変更した者は入学できるとするなら、相撲界で日本人に帰化した者だけが親方になれるという規定以上にひどいことだ。「男だ女だなんてことにこだわらない」という主張がだんだん強くなっていく世界で、「女はいい。男は初めから除外」という国立女子大学の存在は、「正当な差別は許される」という考えに支えられている。当人たちが「差別」という語を使いたがらないから、「区別」と言い換えている。

警備

WOWOWのドラマ「フィクサー」(脚本:井上由美子)を見た。総理大臣が交通事故で病院に運ばれる。意識不明の重態。「え~、なんだよ!」と思ったのは、病院にも、病室名にも警備は一切ないのだ。病室は番号を合わせるロック式で、首相家族はその番号を知っていて、自由に出入りできる。家族と同行した者が、その番号を盗み見して、病室に勝手に入るというシーンがあるのだが、警官の姿など1度も出てこない。病室の警備はないのだ。このご時世に、総理大臣が警備もない病室にひとりでいるか?

 そのほか、オイオイと言いたくなる個所がいくらもあり、こういう不自然さに気がつかない鈍感さがないとドラマは楽しめないのだろう。

 今、よく見ているテレビ番組は、「ドキュメント72時間」、「BS世界のドキュメンタリー」、「映像の世紀 バタフライエフェクト」、「病院ラジオ」、「沁みる夜汽車」、「ヒューマニエンス 40億年のたくらみ」などいずれもNHKだ。。民放では、加藤浩次の「居間からサイエンス」(BSテレ東)とバカリズムの「私のバカせまい史」(フジ)くらいか。いずれも、ノンフィクション。

クラリネット

最近、Richard Stoltzman(リチャード・ストルツマン)のクラリネットをよく聞いている。朝は、“Worldbeat Bach”で、バッハの世界音楽を楽しみ、深夜は”Lamento”を聞く。このアルバムタイトルの意味は、「哀歌」。「バッハ」の方は、買ったCDに1か所音飛びがあったので、売り手に交換を申し入れるのは面倒なので、新たに買いなおした。中古が不当に安いというのは、喜んでいいのかどうか。